国民民主、進む「ゆ党」化 「政策実現」優先、政権とも是々非々…
国民民主党が、与党でも野党でもない「ゆ党」路線を突き進んでいる。与党と政策協議を重ね、肝いりの「年収103万円の壁」引き上げを総合経済対策に盛り込ませた一方で、野党間の政治改革協議にも加わる。来夏の参院選をにらみ、政策実現と政権との対峙(たいじ)を両立させる戦略で、存在感をアピールしたい考えだ。 2日午後、衆院本会議。衆院選後初の代表質問に立ったのは玉木雄一郎代表ではなく、3期目の浅野哲氏(42)。不倫問題が発覚した玉木氏の代表続投がすんなり決まるなど党内の人材不足が指摘される中、「若手の有望株」(幹部)に白羽の矢が立った。 浅野氏は、「年収の壁」引き上げ、ガソリン減税を中心に、原発の再稼働や新増設、賃上げなど政策提案に時間を割いた。立憲民主党の野田佳彦代表が企業・団体献金禁止に後ろ向きな石破茂首相を厳しくただしたのに比べ、政治改革への言及は目立たなかった。 「批判ゼロ。もう与党だな」。立民中堅は冷ややかな視線を送る。自民党重鎮は「われわれが触れづらい分野、手が届いていない政策に触れてくれた。ありがたいね」と笑顔を見せた。 国民は衆院選前も政策協議と引き換えに政府予算に賛成するなど与党と協調路線を取ってきた。根強い「ゆ党」批判にさらされてきたが、衆院選で改選前4倍の28議席に躍進。玉木氏は「是々非々、政策本位の姿勢は間違っていない」と自信をのぞかせる。 衆院選後の与党への接近は顕著だ。自公との「年収の壁」協議では、総合経済対策への明記と引き換えに、臨時国会の審議前にもかかわらず、補正予算案の賛成を事実上表明。11月27日には玉木氏ら幹部が首相官邸で石破首相と会談し、次期エネルギー基本計画に原発の新増設を盛り込むよう要請した。現計画では新増設に触れておらず、「私たちより先を行く」(自民の小野寺五典政調会長)。 与党に近い「ゆ党」をまい進する国民だが、玉木氏は「われわれは野党。各党等距離だ」と言ってはばからない。ただ、立民が主導する政治改革法案の野党共同提出について「野党で法案を出しても通らない。自己満足だ」と批判。参院選での立民との選挙協力についても、「基本政策の一致が最優先だ」と突き放す。 今後さらに政権寄りに傾斜すれば、支持者の離反につながりかねない。党幹部も「バランスは大事」と認めつつ、強気を装う。「今は政策の果実を取れるだけ取りにいく。それが有権者の支持につながる」 (岩谷瞬)
西日本新聞