「中抜きしてる」「監査必要」と非難も…2次避難所での食事提供 「予算と人員を考えると難しい」現実とは
原価を支払えば、目の前に弁当が出てくるわけではない
中川さん自身も2次避難先を続ける上で、被災者にとって3食付きのほうがいいのではと検討したことから、その大変さを痛感したと言います。 これまで食事を注文していた2軒の仕出し店に、予算と1日3食という条件を提示したところ、「毎日メニューを変えないといけないので、手間と材料費を考えると難しい」「1食800円以上で1200円配達料がかかってしまいます」という返事でした。 次にスーパーで購入したパンや弁当を提供できないかとも検討。2軒のスーパーに打診しますが、週末は弁当の配達を行ってない、人手が足りず毎日配達できないと言われてしまいました。しかし自身の宿でも、コロナ禍の影響で、従業員が減ってしまっており、受け取りに行くための人員に余裕がありません。 「コメントで弁当は原価100円もしないと言う人もいましたが、原価が100円だとしても100円貯金箱に入れたらお弁当が現れるの?という話です」。人出と予算が足りずに断念した中川さんには、”善意からなる”批判に潜む、宿の実情に対する無理解が見過ごせなかったようです。
素泊まりでの協力となった理由
ちなみに、「法林寺温泉」の通常の宿泊料金は、素泊まり平日4650円~、1泊2食付き平日9300円~(1人料金+500円、時期やコース内容により異なる)。そのため、支給額の上限である8000円ではなく、6800円で受け入れています(被災者は無料での利用)。 「『いくらで提供できますか』と聞かれました。通常であれば夕方4時に来られる方が多く、翌朝10時でチェックアウトされます。そこで、延長料金の1650円、1名での個室利用の500円を足すという計算で算出しました」 それでも人件費などを考えると、利益に結びつかない額だそうです。期間は3月31日までで、4人宿泊できる客室を5部屋、2人用の部屋を2部屋確保。最大で4家族に5部屋提供していたそうです(2月27日時点)。被災者が滞在していなくても、その分の部屋は空けている必要があります。そのため観光客を入れることもできず、受け入れに伴う支給もありません。 「1、2日くらいなら弁当を用意はできるでしょうが、3月31日までだと60日以上続く。うちの施設は素泊まりという条件だからこそ協力できたが、3食であればできませんでした。そんな状況で、こういった批判が起こってしまうとは…」。実情を把握せぬままの情報発信によって、2次避難の受け入れ先を決めたことへの気持ちさえも揺らいでしまったと言います。