高畑充希、『光る君へ』定子として生き抜いて 「穏やかな日々の中に幸せを見つけられた」
放送から半年が過ぎ、多彩な登場人物たちに視聴者が魅了されているNHK大河ドラマ『光る君へ』。主人公・まひろ(吉高由里子)を筆頭に、“強い”女性が多く登場してきた中で、もっとも運命に翻弄されているとも言えるのが、高畑充希が演じる藤原定子だ。清少納言(ファーストサマーウイカ)との絆、一条天皇(塩野瑛久)への思いなど、高畑にじっくりと話を聞いた。 【写真】『光る君へ』名シーンのひとつ 『枕草子』をめぐる清少納言(ファーストサマーウイカ)と定子(高畑充希)の名場面
定子を通して感じた日本文学の素晴らしさ
――高畑さんの出演が発表された際には、「調べれば調べるほど、彼女に魅了されている自分も居ます」とコメントをされていました。実際に藤原定子を演じてみて、何か新しく形作られていったイメージはありましたか? 高畑充希(以下、高畑):定子という人物には、『枕草子』に描かれていることもあり、明るい人柄やユーモアがあるという印象がありました。そこから実際に演じるにあたって、強くて“ハンサム”な部分もある人というイメージが中盤ぐらいまではありましたが、サロンを開いていた華やかな頃を経て、次から次へとつらい出来事が起こる役柄なので、最初に想定していたものとは違った定子像になっていった感覚はあります。短命ながらもドラマティックな人生を歩んだ方だなと思います。14歳から24歳ぐらいまでのおよそ10年という期間を生き抜く役柄はそこまで多くはないので、とても新鮮でした。私は定子を演じ終えて、「ゴールテープを切ってパタン!」みたいな感覚で現場を後にしました。シリアスで大変なシーンも多かったですが、現場自体は穏やかで楽しかったので、この取材の前にもスタジオの横を通ってみんな元気に撮影してるかなと思いました。 ――定子を演じるにあたって、どのように役作りをされていきましたか? 高畑:私は緻密に組み立てていくのが得意なタイプではなく、今回の定子に対しても台本を読んだ印象や制作の方々の話から、待っているだけのお姫様ではなく、能動的なカッコいい部分を見せられるように意識しつつ、華やかさや儚さも取り入れていきたいと思っていました。ですが、撮影に入る前にこうしてみようという考えが明確にあったわけではなく、撮影に入ってみなさんと作っていく中で、生まれていったものが大きいです。あとは衣装がとにかく重たくてあまり動けないんですけど、平安の当時は足や手が少し出るだけでも品がなく見えていたというのを聞いて、動きのスピードを心がけていました。全てがゆったりなので眠くなるんです(笑)。撮影に関しては月に1回、同じセットで火曜日から金曜日にかけて、朝から晩まで撮るという定子ウィークみたいな週があり、水曜日ぐらいになってくると、衣装が温かいお布団みたいになってちょっと眠たくなるのが苦労した部分ですかね(笑)。 ――清少納言が書いた『枕草子』のイメージが、1000年後の現代でもそのまま定子のパブリックイメージとして残っているということについてはどう感じていますか? 高畑:文字として残すことにこれほどのパワーがあったのかと。『枕草子』が完成するシーンのオンエアを観た時に、こういった守り方があるんだとその時に実感としてやっと受け取れましたし、少納言はなんてカッコいい女性なんだと思いました。「春はあけぼの」から始まる文章を学生時代に習っていたはずなのに、その意味を感覚でしか受け取ってこれていなかったので、今回この役を通じて日本文学の素晴らしさを身に染みて感じられたのはいい経験になりました。 ――『枕草子』の誕生を描いたシーンの演技で心がけたことは? 高畑:『枕草子』の誕生を情景だけで描いて、映像として四季の移ろいを表現されていて、大石(静)さんの書いた台本を読んだ時から一番好きなシーンでした。定子や少納言の気持ちというのもあるんですけど、情景に馴染めるようにということを一番に考えていましたね。一連のシーンでは少納言の気持ちに胸を打たれるものが大きいので、私はできるだけ感情的にならないように、そこにいることだけを心がけていました。語りも当時の言葉か現代語訳なのか、読むのは定子か少納言なのか、現場のみなさんといろんなパターンを試行錯誤しながら作っていったんです。実は、私がクランクアップした後に、定子が読んだ方が伝わるのではないかということで、朗読を収録しにきました。それぐらい俳優陣と制作陣とで悩んだ結果、私が読ませていただくという形になりました。 ――清少納言を演じたファーストサマーウイカさんが、「定子様が素晴らしい」と取材会の中で話していました。 高畑:ウイカちゃんがいつもそう言ってくれることに、救われた部分が大きかったですね。憧れを持たれる役というのは今回が初めてに近い経験だったんです。憧れの目で見てもらえる人物像にしなければならないというプレッシャーを感じていたので、その点でウイカちゃんが憧れの存在として接してくれたのは、私を楽にしてくれていました。ウイカちゃんと一緒にソウルメイトの役柄ができて楽しかったです。定子は能動的な部分もありつつ、少納言や藤原家のみんなであったり、一条天皇(塩野瑛久)だったりから受け取ることも多い役だったので、みなさんからエネルギーをもらって引き出してもらえた表情だったり、伊周(三浦翔平)から「皇子を産め!」と罵倒されるシーンがあったりして、三浦さんや(井浦)新さんとの芝居から生まれた感情もたくさんありました。