大手ゼネコン、業績「急ブレーキ」でも、株価が上がり続ける理由とは?
焦点は完成工事利益率
ゼネコン各社の採算状況を端的に表すものとして証券アナリストが特にマークしている数値がある。単体ベースでの完成工事利益率だ。 建築、土木合わせた建設事業の完成工事利益率が高まるほどに収益は押し上げられ、逆に利益率がダウンすると収益も下降する。 これを見ると、今期の予想は大成建設が12.3%(前期実績14.6%)、清水建設は12.8%(同13.2%)、鹿島が11.4%(同14.7%)、大林組は12.8%(同13.0%)。清水建設と鹿島は前期に比べ、それぞれ2・4ポイント、3・3ポイントもの大幅減を見込んでいる。これが営業利益見通しの大幅減につながっている。 しかし、2020年の東京五輪開催を控えた高水準の受注によって、大手ゼネコン各社とも超繁忙状態が続く、との見方では一致。資材費や労務費アップを十分にこなすことが可能、との見方がアナリストの間では有力だ。
株価は記録的高水準に
そうした読みを反映して、ゼネコン各社の株価は5月半ば以降、強烈な強さを発揮している。大成建設が5月23日に947円、大林組も24日には1255円と91年以来、26年ぶりの高値圏に浮上。ゼネコンを含めた東証・建設株指数も23日には1223.46ポイントと約20年ぶりの高水準に駆け上がった。 株式市場関係者の間からは、こうした動きについて「短期的な過熱感はあっても、基本的には業績のアップトレンドに支えられたもの」(銀行系証券テクニカルアナリスト)とし、「微調整を挟みながら、なお上値追いが続く可能性がある」(同)との声が上がっている。
評価余地大きい予想PER
大成建設の場合、堅めの線と見られる会社側の収益見通し(今期一株利益予想77.5円=株式併合の影響を考慮しない場合の会社側予想)を前提にしても足元の予想PER(株価収益率)は12倍台。東証1部上場銘柄平均の15倍台を下回っている。仮に、株価が1000円台に上昇しても13倍弱。 大林組の予想PERは、わずか9倍台というレベルにあるほか、清水建設は12倍台。そして鹿島は10倍台。ゼネコン株の評価余地はなお大きい、と言えるだろう。 (証券ジャーナリスト・神田治明)