至宝の 5.2リッターのV10を搭載! ガヤルドLP560-4スパイダーは、どんなランボルギーニだったのか? 運転は決してやさしいクルマではない!
屋根開きのガヤルド、デートカーかと思ったら・・・
ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年6月号に掲載されたランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダーのリポートを取り上げる。ガヤルドLP560-4クーペのデビューの1年後に登場したスパイダー。その国際試乗会の舞台に選ばれたのは、大西洋に浮かぶスペインのカナリア諸島。オープン・エアとワインディングを同時に楽しむには絶好の南の島からのリポートだ。 【写真6枚】ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダーはどんなスポーツカーだったのか? 詳細画像でチェックする ◆リッター107psを超える560ps 大西洋に浮かぶ常春のリゾート、スペイン領カナリア諸島。そのなかでも最大の面積と1番高い山を持つテネリフェ島が、今回の新型ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダーのお披露目の舞台だった。 昨年のLP560-4クーペの国際試乗会はアメリカのラスベガスで開かれた。巨大なオーバルと小さなインフィールドのコースを持つラスベガス・モーター・スピードウェイを思う存分走り回ったのを思い出す。 一方、テネリフェには、むろんサーキットはない。しかし、その代わりにスペインの最高峰となる標高3718mのテイデ山に向かうワインディングがあった。オープン・エアの快適性とスーパー・スポーツのパフォーマンスを同時に体験するには絶好の環境である。しかも、宿泊先は超豪華リゾート・ホテル。ランボルギーニのツボを押さえた粋な計らいに感謝しなければなるまい。 試乗当日、ホテル正面の駐車場には色とりどりのガヤルドLP560-4スパイダーが並べられていた。最近日本のみならず世界中で流行っているという白だけでも、純白とパール、マットの3種類があったし、そのほかにもレモンのようなイエローやメロンのようなグリーンなど、スパイダーにふさわしい軽やかな色が豊富に用意されているのがうれしい。そのうちの1台に乗り込んでキイをひねると、ブォォーンと派手な雄叫びを上げて運転席の背後に縦置きされた5.2リッターV10ユニットが目を覚まし、獣の唸り声のような低いアイドリング音をたて始めた。 昨年のLP560-4クーペともにデビューしたこの新ユニットは直噴化されたヘッドや12.5まで高められた圧縮比を持ち、リッター107psを超える560psを8000回転で発生する。車名の「560」の由来である。ちなみに「LP」は、エンジンの搭載位置を表す「縦置き、後方」を意味するイタリア語のイニシャル。「4」は4輪駆動であることを示している。ビスカス・カップリングを使った4駆システムは通常時30対70の割合で前後輪にトルクを配分。トランスミッションは6段マニュアルのほか6段セミATのeギアもオプションとして用意されており、今や世界中のオーナーの大多数が後者を選んでいるという。 そのほかに特筆すべきは、前後ダブルウィッシュボーンの足回りがリファインされたこと。そしてパワーアップしながら約20kgも軽量化されたことで、その結果、0-100km/h加速は旧型よりも0.3秒速い4秒ジャスト、最高速は324km/hというのがメーカー公表値だ。しかも、CO2の排出量は旧型より18%も低減しているという。 ◆格段に洗練された乗り味 まず、センター・コンソールのトグル・スイッチを使って20秒で屋根を開けると、次に右手側のシフト・パドルを1回引いてギアを1速に入れ、発進。ペダルの足応えもステアリングの手応えもかなり重めだ。アクセレレーターを踏み込んで行っても最初はピクリとも動かない。徐々に深く踏み込んで行ってようやくググッと動き出す感じ。すこぶる重厚な走り出しだ。フロアはトコトン固く、ボディ全体の剛性感もすごい。 動きは滑らかで、先代よりフリクションが少なく、格段に洗練されている。eギアのオート・モードもかつてに比べればずっとスムーズになったが、それでもアップ時のシフト・ショックなどギクシャク感は相変わらずあるから、自分でアクセルを抜きながらパドルを使ってシフトした方がずっと気持ちいい。 4000回転あたりまでは、回転数を一定に保っている限りまったく静かだ。6速100km/hは2400回転。風切り音もなく、快適そのものだ。それでいて矢のような直進安定性を持っているから、これはデート・カーとしても最適だろう。 しかし、アクセレレーターを強く踏み込むや、フォォンと一声いなないたかと思うと辺り一面に爆音をまき散らして、猛牛のように突進し始める。だが、かつてのような野太い音を響かせたりはしない。乾いた音色に変わりはないが、もう少し高く洗練された音で、武骨さは薄れた。 ◆ダンスするように走れ! シフト・モードをスポーツやコルサにすると排気音も切り替えられて、いっそう派手な爆音になる。これはちょっとやり過ぎではないかと思えるくらいに凄い。音と同時に自動姿勢安定装置、ESPの制御もアグレッシブに変更されて、お尻を少し滑らすような運転も許容してくれるようになる。これは思いのほか有効だ。 やがて、山道を上り始めた。タイトで、しかも奥に行くにつれてさらに曲率が深くなるようなコーナーが次々に出てくるスリリングなワインディング。ガヤルドLP560-4スパイダーは、ふつうに街中や高速道路を運転している限りはすこぶるイージーで快適なクルマだけれど、ワインディングをうまく駆け抜けるのは決してやさしいクルマではない。前後重量配分は43対57。タイト・コーナーでは前輪にしっかり荷重を残してやらないと曲がらない。ブレーキをやや残してコーナーに進入し、抜きながらスムーズにステアリングを切り込んで行く必要がある。そうすると驚くほど曲がる。曲がり過ぎるくらいに。そのサジ加減が難しい。 キモはブレーキの使い方にある。最初は踏み代が大きいことに戸惑う人もいるかも知れない。サーボが弱めなので、しっかり踏まないと効かない。しかしコツを覚えると、微妙なタッチにも反応する素晴らしいブレーキであることがわかる。飛ばせば飛ばすほどいい感触になってくる。 クルマの安定性が上がったために、重厚から軽快に変わる瞬間を体験するためには、かなり攻め込まなければならなくなった。しかし、このクルマでダンスするように少しお尻を流し気味にしてワインディングを駆け抜けられたら……こんな楽しくて気持ちのいいことはないはずだ。 文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=アウトモビリ・ランボルギーニS.p.A ガヤルドLP560-4スパイダーのおさえどころ ・LP560-4クーペ同様、よりアグレッシブに進化したデザイン。 ・クーペ譲りの直噴V10を搭載し、パワーは旧型比40ps増しの560psに。 ・これまたクーペ同様の軽量化により、旧型比20kg減の乾燥重量1550kgを実現。 ・旧型より0.3秒速い0-100km/h加速4秒、最高速324km/hを誇る一方、燃費を18%削減。 ■ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダー 駆動方式 エンジン・ミド縦置きフルタイム4WD 全長×全幅×全高 4345×1900×1184mm ホイールベース 2560mm 車両重量 1550kg(乾燥時) エンジン形式 アルミ製90度V10DOHC40バルブ 排気量 5204cc ボア×ストローク 84.5×92.8mm 最高出力 560ps/8000rpm 最大トルク 55.1kgm/6500rpm トランスミッション 6段MT/6段セミAT サスペンション(前) ダブルウィッシボーン/コイル サスペンション(後) ダブルウィッシボーン/コイル ブレーキ (前後)通気空冷式ディスク タイヤ ピレリPゼロ (前)235/35ZR19 (後)295/30ZR19 車両本体価格 2661万2250円(6MT)/2766万2250円(6セミAT) (ENGINE2009年6月号)
ENGINE編集部
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