星野リゾートの温泉旅館「界 奥飛騨」を現地取材!気になる全貌を徹底紹介
2024年9月、星野リゾートが展開する高級温泉旅館ブランド「界 奥飛騨」が、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷にオープンした。「界」ブランドとしては24施設目で、「界」および星野リゾートの施設は東海3県に初上陸となる。そんな大注目の「界 奥飛騨」を徹底取材!その全貌をお届けしよう。 【写真】2室しかない特別室の客室露天風呂。49の全客室のうち、28室が露天風呂付き ■【ロケーション】人気観光地の高山市街から車で約45分 岐阜県の北東部に位置し、北アルプスや乗鞍岳など標高3000メートル級の山々に囲まれた奥飛騨地方。春夏には涼やかな渓流や森林浴を、そして秋は紅葉、冬は雪景色など、四季折々のダイナミックな山岳風景を楽しむことができる。 奥飛騨温泉郷は、平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉という5つの温泉郷の総称。100を超える源泉が湧き、その湧出量も豊富なことから、日本屈指の温泉地として知られている。 そのなかで「界 奥飛騨」は、温泉郷の玄関口である平湯温泉に属する。名古屋からは車で約3時間、乗鞍岳や上高地といった人気観光地への交通拠点である「平湯バスターミナル」も徒歩約3分という好アクセスだ。また、伝統的な建造物が保存されていることで人気の高山の古い町並みからは車で約45分の距離にある。 ■【コンセプト】山岳地ならではの温泉と飛騨文化が体感できる宿 「界」はモダンで快適な空間と、伝統文化や風習など地域の特色を生かした体験ができることで人気の温泉旅館ブランド。 「界 奥飛騨」のテーマは、「山岳温泉にめざめ、飛騨デザインに寛ぐ宿」。山あいの新鮮な空気や風を感じながら、山岳地ならではの温泉を楽しめることと、飛騨の歴史や文化、そして高い木工技術によって培われてきた伝統工芸に触れながら、ゆったり過ごすことを宿のコンセプトにしている。 約6500平方メートルの敷地内には、東西2つの宿泊棟に加え、大浴場のある湯小屋棟、中庭や足湯のある離れ棟という4つの棟がそれぞれ独立。宿泊客は宿泊棟から出て、湯小屋棟や離れ棟などへ足を運ぶことになる。これは、この温泉街ではかつて人々が家から共同浴場へ徒歩で出掛けて湯浴みをする習慣があったことから、その風景になぞらえ、温泉地を巡るように屋外へ回遊する配置になっているのだとか。 施設の中央にある中庭には湯の川が流れ、地域の自生種や広葉樹が植生されている。さらに、建設地にもともとあった石を用いて、この地域で見られる石積みの風景を表現。石積みの先は視界が開けており、活火山のアカンダナ山が望める。 ■【客室】半数以上が露天風呂付き!「界」初の1人部屋も登場 客室数は全49室で、うち西館の28室は全室露天風呂付きだ。東館には定員3名の和室が11部屋、ファミリーやグループで利用できる定員4名の和室が6部屋、愛犬と一緒に泊まれる愛犬ルームが2部屋、そしていわゆるソロ活やワーケーションなどにぴったりの1名定員の部屋が2室ある。なお、1名定員の部屋は「界」ブランドで初登場となる。バラエティ豊かなラインナップから、旅のスタイルに合わせて自分にぴったりの部屋を選ぶことができる。 「界」ブランドに共通するのが、その土地の個性を表現した「ご当地部屋」だ。「界 奥飛騨」では、すべての客室が飛騨の伝統工芸を散りばめたご当地部屋「飛騨MOKUの間」となっている。 「飛騨MOKUの間」で特徴的なのが、飛騨の伝統的な木工技術である曲木(まげき)をモチーフにしたヘッドボードだ。飛騨地域に植生している広葉樹のブナ、タモ、サクラ、ナラなどの木材が、寝台の上で柔らかな曲線を描いており、ベッドで横になると木々に優しく包まれるような感覚を味わえる。 また、地元の家具メーカーである「飛騨産業」が手掛ける曲木チェアや、飛騨高山の伝統的な漆塗りである「飛騨春慶(ひだしゅんけい)」を用いたウォールアート、あざやかな色合いが印象的な「飛騨染」のオリジナルクッションなども全室に設置。実用的な設えと伝統工芸を組み合わせて、居心地のいい空間を作り出す手腕はさすがと言える。 ■【大浴場】奥飛騨の空を切り取ったユニークな露天風呂 大浴場には、内湯に源泉掛け流しの「あつ湯」と、リラックス効果の高い「ぬる湯」という2種類の湯船がある。あつ湯は約41.5度、ぬる湯は約38度に設定されているそう。 露天風呂は、北アルプスの「雪の回廊」をイメージした丸みのある白い壁で浴槽が囲まれており、真上には約3.3メートル×約3.1メートルの巨大な穴がぽっかりと開いたユニークなデザインだ。頭上の空と山岳地の空気、そしてこんこんと湧く湯の音を感じながら、日常を忘れられる癒やしのひとときが過ごせるだろう。 泉質はナトリウム・カルシウム–炭酸水素塩・塩化物泉で、肌に優しく、健康増進や疲労回復などに効果があると言われる。まずはぬる湯で掛け湯をして温泉成分を体に慣らしたあと、5分ほどあつ湯で温まってから、露天風呂でくつろぐのがおすすめだという。 浴場と脱衣所には、和漢生薬成分配合の「界」オリジナルアメニティを用意。シャンプーやコンディショナー、ボディソープ、クレンジング、洗顔料に加え、化粧水や乳液、ボディローションなども備え付けられている。 湯上がり処では、ビネガードリンクやほうじ茶などの湯上りドリンクとアイスキャンディーを無料で提供。温泉の余韻にひたりながら、ほっと一息つくことができる。 ■【離れ棟】源泉掛け流しの足湯やライブラリーでのんびり 大浴場だけでなく、中庭の一角にある源泉掛け流しの足湯にも注目だ。足を湯につけると、遠くに雄大な山々が望め、目の前を流れる川のせせらぎが聞こえてくる。時間帯によって差し込む光や音、外気温なども移り変わり、その度に受ける印象も異なるので、朝や夕方、夜など、ぜひ何度も足を運んでみてほしい。利用可能時間は15時~24時と、翌6時~12時までだ。 足湯の背後には、飛騨高山やグルメ、温泉などをテーマに選書された書籍や子ども向けの絵本が並ぶトラベルライブラリーがある。室内は飛騨の森に植生しているブナ、ナラ、タモ、サクラなど広葉樹が用いられたデザイン壁があり、まるで飛騨の森に迷い込んだような空間だ。 デザイン壁に作り付けられた棚には、かつて実際に飛騨の木工職人が使用していたというノミやカンナといった工具が展示されている。 トラベルライブラリーには、コーヒーや地元産のハーブティーなどのフリードリンクも用意。書籍、ドリンクともに、部屋へ持ち帰ったり、足湯につかりながら楽しんだりするのもOKだ。 ■【アクティビティ】飛騨の木工技術や現代風の湯治を体験 ハイクオリティな客室や温泉だけでなく、地域や温泉にまつわるさまざまなアクティビティが用意されているのが「界」の魅力。その象徴といえるのが、「界」流のおもてなしの一環である「ご当地楽(とうちがく)」だ。これは、施設内で地域の特徴的な文化を体験できるワークショップで、全国の「界」施設で趣向を凝らしたプログラムが展開されている。 「界 奥飛騨」では、「飛騨の匠体験」と題し、飛騨の木工技術である曲木を用いたバッグハンドル作りを実施している。会場は、トラベルライブラリーのある離れ棟だ。まずはスタッフが、平城京・平安京の造営にも貢献したと言われる木工集団「飛騨の匠」の1300年以上にわたる歴史や技術を解説。その後、木を曲げる作業工程に挑戦する。実際の曲木は木材を高熱の蒸気で蒸して曲げていく技法だが、この体験では簡易的にアレンジした作業を行う。 各客室に用意されている「界」オリジナル風呂敷を、作った曲木のバッグハンドルに結ぶことで“風呂敷バッグ”が完成。木の香りや手触りを実際に感じながら手を動かすことで、木材や木工技術、そして地域の営みや文化への理解をより深めることができる。 ちなみに個人差はあるが、所要時間は30分程度だ。参加費は無料。毎日15時30分~21時30分の間、1時間ごとに開催されているので、フロントもしくは電話で予約をしよう。 また、中庭では毎日16時10分から、同施設の湯守りが温泉の成り立ちや泉質、効果的な入浴法などを解説する「温泉いろは」が行われる。クイズ形式でコミュニケーションをとりながら、楽しく温泉の知識を得ることができる。所要時間は約30分だが、テンポよく進むので、あっという間に感じるだろう。 毎朝7時10分からは、同じく中庭で、スタッフとともにオリジナルの体操やストレッチなどを行う「現代湯治体操『奥飛騨やまびこ体操』」を開催。アカンダナ山を見上げ、山岳地の清々しい空気を全身に感じながら、心身を目覚めさせよう。こちらの所要時間は約20分。「温泉いろは」は予約不要、「奥飛騨やまびこ体操」はフロントか電話にて予約受付をしている。ともに参加費は無料だ。 ■【食事】飛騨牛に舌鼓!地元食材を使った絶品料理 旅の醍醐味として欠かせないもののひとつが食事だ。食事処はプライベート感のある半個室で、飛騨や周辺地域の恵みをふんだんに使用した会席料理が提供される。 夕食の特別会席「飛騨牛の朴葉つと焼き会席」では、土瓶蒸しやお造り、天ぷらなど、創意工夫を凝らした料理の数々がずらり。メインは、あらかじめ焼き色がつけられた飛騨牛を焼き台で好みの焼き加減に仕上げる「飛騨牛の朴葉つと焼き」。口の中でとろけるような柔らかさのヒレとロースを、塩やわさび、醤油、飛騨産の実⼭椒、そして郷土料理でもある朴葉味噌などで変化をつけながら堪能しよう。 デザートには、「飛騨コンロ」を模した器の上に、こんがり焼かれたマシュマロが登場。これに、高山エリアの名物である醤油味の甘くないみたらしのタレをかけて味わうというユニークな一品だ。 朝食には、地元食材を中心にした計15品の和食膳「ご当地朝食」を提供。黒ゴマとエゴマを自分ですってドレッシングに和えて食べるサラダや、雪深い飛騨地方で食べられてきた保存食である干し野菜をアレンジした「干し野菜と豚肉の味噌鍋」など、このエリアならではの食材や調理法を採用。朝から満足度の高い料理の数々が味わえる。 北アルプスの山々に囲まれながら、山岳地ならではの温泉と飛騨の伝統文化を存分に満喫できる「界 奥飛騨」。周辺観光地の宿泊拠点としてはもちろん、四季折々の風景を楽しみながらゆっくりと滞在し、とことん非日常を味わうのもいいだろう。なお、取材を行った9月末の時点で、11月末までは予約で満室とのこと。以降も続々と予約が埋まってしまうことが予想されるので、早めに旅の予定を立てるのがおすすめだ。 【取材・文=前田智恵美/撮影=古川寛二】 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。