ロシアがアレッポなど空爆、シリア反政府勢力の前進続く中
シリアの反政府勢力が同国第2の都市アレッポの一部を掌握し、前進する中、シリア政権側を支援するロシアは1日、アレッポなどに「一連の空爆」を実施した。シリア国内に情報源のネットワークをもつシリア人権監視団(SOHR)が発表した。 SOHRによると、北部アレッポでは病院が空爆を受けて12人が死亡した。北西部の都市イドリブでは8人が死亡し、50人以上が負傷したという。 ロシアの戦闘機はイドリブと中部ハマの農村部も攻撃した。これらは反政府勢力の攻撃を主導するグループが「最近、掌握した」場所だと、SOHRは付け加えた。 シリア政府は2011年に内戦が勃発して以降で初めて、アレッポの支配権を失ったと、SOHRはAFP通信に語った。 27日に始まった反政府勢力による奇襲は、シリア内戦において、近年で最も重要な戦闘となっている。 この攻撃は、イスラム過激派組織「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」と、トルコの支援を受ける同盟勢力が主導している。 SOHRによると、これまでに少なくとも20人の市民を含む300人以上が殺害された。 アレッポに反政府勢力が押し寄せた11月30日、ロシアは2016年以来となるアレッポへの攻撃を実施したと、SOHRは述べた。 ロシア空軍は内戦が最も激化していた時期に、シリアのバシャール・アル・アサド大統領が権力を維持するうえで重要な役割を果たした。 SOHRは、HTSが支配するイドリブの難民キャンプが1日早朝、ロシアによる5度の空爆を受けたと報告した。 その後、アレッポ大学病院が4度空爆を受け、民間人8人を含む12人が死亡したほか、アレッポのほかの地域も攻撃の標的になったと、SOHRは報告した。 SOHRがAFP通信に伝えたところによると、反政府勢力の戦闘員は1日、アレッポのほぼ全域をシリア政府軍から奪取した。 政府軍は反攻準備のため撤退した。 SOHRによると、反政府勢力はアレッポから南下し、シリア第4の都市ハマに近いいくつかの町にも到達した。 シリア国防省は、政府軍は部隊やロケットランチャー、重装備を投入し、同地域の「防衛線を強化」しているとした。 同省は声明で、「シリアとロシアの共同の戦闘機」が反政府勢力の陣地に対する精密攻撃を強化し、数十人が死傷したとした。 また、政府軍が占拠されたいくつかの町を奪還し、反政府勢力の前進を阻止し、反政府勢力は同地域から逃げ出したと主張した。 国連シリア担当特使のゲイル・O・ペデルセン氏は、現在の状況は「民間人に深刻な危険をもたらし、国際平和と安全保障に深刻な影響を及ぼす」と警告した。 ペデルセン特使は、シリアにおける「紛争解決ではなく、単なる紛争管理」を行うことの危険性を自分は繰り返し警告してきたと述べた。 そして、現在の紛争は、2015年に国連安全保障理事会が承認した停戦に向けた取り組みの「集団的な失敗を示すもの」だとし、紛争を終わらせるための「緊急かつ真剣な政治的関与」が必要だと求めた。 アサド大統領は11月30日、「すべてのテロリストとその後ろ盾に立ち向かい、(シリアの)安定と領土保全を守る」と誓った。 大統領府によると、アサド大統領は「(シリアには)同盟国や友好国の助けを借りて、テロリストの攻撃がどれほど激しくても、打ち負かして排除する能力がある」と述べた。 シリアの同盟国であるイランのアッバス・アラグチ外相は、イランは「シリアの政府と軍を断固として支持する」と声明で述べた。 アラグチ氏は攻撃について協議するために、1日にシリア・ダマスカスを訪問した。 シリアでは、アサド大統領の政府が2011年に民主化運動を弾圧した後、内戦が勃発。これまでに死者は約50万人に上っている。 アサド政権を支えるロシアと反体制派を支援するトルコが2020年に停戦で合意して以降、戦闘の大部分は収束しているが、反政府勢力はイドリブとその周辺地域の大半で支配を維持している。 イドリブはアレッポからわずか55キロメートルに位置する。2016年に政府軍が掌握するまでは反政府勢力の拠点だった。 直近の攻撃を主導するHTSは、アサド政権と戦う勢力の中で最も効果的かつ致命的な組織の一つとみなされている。イドリブではすでに、支配的な勢力となっていた。 SOHRによると、反政府勢力はアレッポの空港と近隣の数十の町を制圧した。 反政府勢力は11月30日午後5時から、夜間外出禁止令を敷くと発表した。 SOHRは、反政府勢力の戦闘員がハマに向かって南下し、政府軍が撤退したとしている。 しかし、政府軍情報筋はこうした主張に異議を唱えたと、シリア国営メディアは11月30日夜に伝えた。 政府軍は反政府勢力が「アレッポとイドリブの前線で、複数の軸から広範な攻撃を開始」し、「100キロメートルを超える範囲で」戦闘が起きたとした。 この戦闘で数十人の兵士が死亡したという。 アメリカ政府の報道官は、シリアの「ロシアとイランへの依存」と、2015年の国連安保理による和平計画を前進させるのをシリアが拒んでいることが、シリアでの「現在の状況をつくり出している」と指摘した。 複数の画像では、11月30日にアレッポを離れようとする人々の車で渋滞が発生している様子や、市内で煙が立ち上っているのが確認できる。 (英語記事 More Russian strikes as Syrian rebels advance after taking Aleppo)
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