アシックスの“ニンバス ミライ”開発秘話 単一素材化と分解可能な接着を実現
シューズのベロと箱にQRコードを付け、箱には循環がわかるようなイラストを描いた。「ユーザーやショップスタッフ、誰もが理解できるように心掛けた。QRコードのみを付けて、プロセスをシンプルにして製品情報とテラサイクルのサイトへの情報を網羅しながら垣根を超えられるようにした。幸いデジタル化を推進していたため、お客さまとのコミュニケーションがデジタル上でできる点を生かしていきたい。できるだけサステナビリティへの取り組みはお客さまにとって義務感ではなく、ベネフィットになるような仕組みを考えた」と奥村マネジャーは語る。自宅まで宅配業者が回収に訪れ、回収後にONE ASICS2000ポイントが付与される。回収したアッパーは87.3%が新たなポリエステル素材に活用できることを確認済みで、再度アッパーとして活用していく予定だ。リサイクルには「テラサイクルの、ポリエステル生地から添加剤などを分離してポリエステルポリマーだけを抽出する手法」を採用しており、アパレルのスキームに採用することも技術的に可能だという。今後服&靴から服&靴のリサイクルも検討していく。ミッドソールとアウトソールは、粉砕処理をしてマットやパネル、建材などの素材の一部にリサイクルする。
こうしてできた“ニンバス ミライ”の製品ライフスタイル全体のCO2換算排出量は6.1kg。業界平均を約57%下回るという。回収でのCO2排出量削減に向けた最適化も行っていく。上福元開発責任者は「技術は見えた。重要なのは続けることと、規模を大きくしていくこと。26年に向けて、販売エリアやリサイクル可能なシューズのラインアップ拡充を目指す」と意欲的だ。