異例の生放送計量は王者木村が話術圧勝も最強日本人対決世界戦はどうなる?
試合の勝敗を分けそうなポイントを王者の木村が「最後は気持ち」と言えば、田中も「メンタル、気持ちです」と答えた。田中は、公開練習から、ずっとこのフレーズを繰り返す。 「こんなに気持ちの強いチャンピオンはそうはいない。全力で頑張ってそして勝ちます」 実は、筆者は、ここに勝負の綾が潜んでいると見ている。 この試合の流れは田中がどう出るかによって決まるだろう。 中国で“世紀の番狂わせ”と言われるTKO勝利で、五輪連覇の“英雄”ゾー・シミンから世界タイトルを獲得した木村は、V1戦では、サウスポーの元WBC世界フライ級王者、五十嵐俊幸(帝拳)を9ラウンドTKOで粉砕した。7月27日に再び中国で行われたフローイラン・サルダール(フィリピン)とのV2戦も、前へ前へとプレッシャーをかけて、パンチをぶん回す、お馴染みのスタイルで6ラウンドにKOした。その“圧”とパワーは試合を重ねるごとにバージョンアップしているが、ファイティングスタイルは誰とやっても変わらない。 要は田中の出方次第なのだ。 本来は、スピードとコンビネーション、出入りを重視したスタイリッシュなボクシングである。 「自分はKOをめったに狙ったことがないしKOできるとラッキーという感じ」 それでも無敗で11戦7KOのレコードがある。 ここまでの高いレベルの相手と木村は過去に拳を交えたことはない。しかも、前試合との間隔が2か月ない。木村は減量苦がないので、同じく短期間の試合間隔で、計量超過、惨敗をした元WBC世界フライ級王者、比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)と比較するのは間違っているのかもしれないが、ネガティブな材料のひとつではある。 ただ田中も階級を上げて、そのスピードとテクニックがどこまで通用するのかが未知数。しかも「メンタル、気持ち」を重ねて口にしている。スピードだけでは、さばききれず、打ち合いになることを想定しているのだ。あえて足を止めて打ち合いを挑みインサイドから崩すギャンブルも考えているのかもしれない。 その賭けが吉と出るのか、それとも凶と出るのか。2017年9月に行われたパランポン・CPフレッシュマート(タイ)とのWBO世界ライトフライ級タイトルマッチは、なんとか逆転で防衛したが、大苦戦。両目の眼下底骨折を負うなどのダメージを受けた“打たれもろさ”への不安もある。 この日、会見、計量を取材していた元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士さんも、「予想が難しい。体を見たが、どちらも素晴らしい仕上がり。当日、どうリカバーをしてくるかを見てみないことにはわからない」と、最終結論を出せなかった。