コント師集団「ザ・プラン9」の挑戦 実験的ライブは唯一無二 匠の技
観客がすべて席につくと、入り口のシャッターが下り始めた。少しばかり客席がざわついた。間もなく「閉鎖された空間」の完成。これから始まるコントへの期待と、ちょっぴりの緊張が交錯する。 ザ・プラン9による「ザ・画廊9 スペシャルコントライブ 芸術家たちの晩餐会」は、こうして幕を開けた。会場は大阪・ミナミの「ラフ&ピース・アートギャラリー」。参加アーティストによる作品がいくつも展示されていた。 出演は、芸術家にふんするザ・プラン9のお~い!久馬、浅越ゴエ、ヤナギブソン、コヴァンサン、きょうくん(爆ノ介はこの日お休み)と、「ホンモノの」アーティスト、井口舞子さん、岡本健作さん、南村杞憂さん。 プラン9のメンバーは架空のアーティストになりきって、3人のホンモノもそれぞれの自作品を紹介していく。笑いをはさんでいくのはもちろんだが、このあたりはギャラリーで行うアート展らしい空気。 そしていきなり、観客を巻き込んで「お絵かきしり取り」がスタート。出演者と観客がホワイトボードにしり取り形式で絵を描いていくゲーム。たとえば「たまご」「ゴリラ」「ラジオ」「オレンジ」としり取りをしながら、それを絵で表現していくルール。これが盛り上がる。描かれた絵が何なのか、描いた本人は説明しないので、次の人は想像力を働かせなければならない。演者と客席が一体となって楽しんだ。 佳境に入ったところで突然、コントはサスペンスドラマ風に変わる。飾ってあった絵が何者かに盗まれたのだ。さらにラブロマンス風な味付けも。限られた時間、客席と舞台がきわめて近いスペースで「これでもか!」といわんばかり、てんこ盛りの内容だった。 プラン9はコント集団だが、こうした実験的な試みにも積極的だ。今春には立命館大の中にある陪審法廷を使って「コート・オブ・コント」を公演した。観客は傍聴人となり、目の前で繰り広げられる原告・被告のバトルを見守った。 これらの脚本を担当するお~い!久馬は、プラン9の舞台だけでなく、他の芸人から漫才、コント、芝居の脚本を依頼される売れっ子ライターでもある。今回の「芸術家たちの晩餐会」も、彼ならではのエンタメ色あふれる作品となった。 プラン9も年齢的にはおじさん集団(最年長の久馬は52歳)になるが、次々と意欲作に取り組むバイタリティーは素晴らしい。一方で多彩なゲストを迎えての「月刊コント」公演は10年以上継続しており、こちらもファンは多い。コントに魅せられたおじさん集団は、ますます元気いっぱいだ。 「ザ・画廊9 スペシャルコントライブ『芸術家たちの晩餐会』」は、ラフ&ピース・アートギャラリー(大阪・千日前)で11月28日~12月1日。「久馬歩責任編集 月刊コント師走号」は、12月4日にクールジャパンパーク大阪SSホールで予定されている。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)