驚きの石破首相「アジア版NATO」構想、実現の可能性を戦後アメリカ外交史から読み解いてみると?
(韓光勲:ライター、社会学研究者) 衆院選では自民党・公明党が過半数を取れず、11月5日にはアメリカ大統領選を控える。日米の政治環境が流動的となる中、北朝鮮がロシアへの軍事協力を深めるなど、東アジアの外交環境は予断を許さない状況が続いている。 朝鮮戦争において国連軍による仁川上陸作戦で破壊された北朝鮮軍のT-34戦車を視察するダグラス・マッカーサー元帥 ここで今一度、石破茂首相の「アジア版NATO」構想を考えてみたい。アジア版NATOは果たして実現可能なのか。筆者の専門分野(大阪大学大学院で専攻)でもある戦後アメリカ外交史の観点から、石破首相の構想を読み解いてみよう。 ■ 石破氏の提言の驚くべき中身 石破氏は首相就任前、アメリカのシンクタンク、ハドソン研究所への寄稿(2024年9月27日)の中で、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を主張した。やや長くなるが、石破氏の主張を引用したい。 <今のウクライナは明日のアジア。ロシアを中国、ウクライナを台湾に置き換えれば、アジアにNATOのような集団的自衛体制が存在しないため、相互防衛の義務がないため戦争が勃発しやすい状態にある。この状況で中国を西側同盟国が抑止するためにはアジア版NATOの創設が不可欠である。 (中略) 最近では、ロシアと北朝鮮は軍事同盟を結び、ロシアから北朝鮮への核技術の移転が進んでいる。北朝鮮は核・ミサイル能力を強化し、これに中国の戦略核が加われば米国の当該地域への拡大抑止は機能しなくなっている。それを補うのはアジア版NATOであり、そこでは中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対する抑止力を確保せねばならない。アジア版NATOにおいても米国の核シェアや核の持ち込みも具体的に検討せねばならない。 現在、日本は日米同盟の他、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリスと準同盟国関係にある。そこでは「2+2」も開催されるようになり戦略的パートナーシップの面として同盟の水平的展開がみられる。韓国とも日米は安全保障協力を深化させている。これらの同盟関係を格上げすれば、日米同盟を中核としたハブ・スポークスが成立し、さらにはアジア版NATOにまで将来は発展させることが可能となる。> これは驚くべき提言である。戦後日本の防衛政策を大幅に変更する政策だ。