後払い「BNPL」が世界で規制強化にさらされる必然、投資家から注目を集める一方で深刻なリスクも
大和総研で主任研究員を務める矢作大祐氏は「BNPLを利用すれば、FRBによる利上げの影響を受けにくくなる」と話し、消費者の間で利上げ負担の回避策としてBNPLの利用が拡大した可能性を挙げる。 もう1つの大きな違いが「利用までの手軽さ」だ。クレジットカードを作る際には本人確認などのためにカードの発行に時間がかかるのに対し、BNPLは電話番号やメールアドレス等を入力するだけで自動与信審査がなされ、即時に商品を購入できる。
もっとも、与信審査の手軽さには危険性もはらむ。 CFPBの調査によれば、BNPLの利用者は非利用者と比べて多くの負債を抱え、それらの返済が未払いとなっていることが多い。さらに貯蓄も少ない傾向にある。 こうした背景から、BNPL利用者の多重債務問題も顕在化している。大和総研の矢作氏は、「個々の取引は少額でも複数のBNPL事業者から借り入れることで多重債務に陥るリスクがある」と指摘する。 ■共有されない信用情報
BNPL事業者は、信用情報機関の顧客データなどを基に与信審査を行っているが、BNPL事業者は顧客情報を信用情報機関に共有していないため、顧客のBNPL負債額がブラックボックスとなっている。このことも多重債務を生み出す一因となっている。 CFPBは2022年にブログ上で、信用情報機関は「できるだけ早くBNPLの顧客データを信用情報機関に組み込み、BNPLのデータが正確に反映されるようにすべきだ」と強調している。
「Apple Pay Later」を展開する米アップルは今年2月に主要BNPL事業者として初めて信用情報機関のエクスペリアンに与信情報を提供することを発表した。ただ、その他の主要BNPL事業者は、いまも信用情報機関に顧客の与信情報を報告していない。そのアップルもサービス開始から約1年が経った今年6月に、早くもBNPLサービスの終了を発表している。 こうした中、スウェーデンのクラーナは3月に「なぜクラーナはアメリカの信用情報機関にBNPLの支払い情報を報告しないのか」と題したプレスリリースを公表。信用情報機関で使用されている信用モデルが時代遅れとなっており、BNPLの支払い情報を信用スコアに組み込むと利用者の信用スコアが著しく低下してしまうと主張している。そのうえで、「『ゾンビ債務』を奨励しているわけでは決してない」と述べている。