最多勝投手から裏方、そして独立リーグの指導者へ 藤井秀悟「プロ野球という夢を追う選手の手助けをできれば」
── 藤井さんのブログは有名でしたが、そもそも始めたきっかけは何ですか。 藤井 野球の出来事は真面目な文体で、プライベートなことは軽めの文体と書き分けていたのですが、読者に「別の人間が書いているのではないか」「藤井は登板日に遊んでいるんじゃないか」という誤解が生じました。というのは、ホームページだと事務所のマネージャーさんに文章を送ってアップするまで2、3日のタイムラグが生じるからです。でもブログならタイムリーにアップできます。自分の気持ちを発信するモノがほしかった。2006年に始めて、16年まで丸10年間、日記代わりに毎日更新していました。 【監督兼GM補佐として活躍】 ── 関西独立リーグ「大阪ゼロロクブルズ」へはどういう経緯で入団されたのですか。 藤井 知り合いの社長さんが関西独立リーグのオーナーをやっていて、その縁で声をかけていただきました。2022年から投手コーチ、23年から監督に就任しました。関西独立リーグには、ほかに堺、兵庫、和歌山、淡路島、そして24年から姫路が加わり6チームになります。 ── 独立リーグはNPBと比較して、どこが違いますか。 藤井 施設、金銭面で大きく違います。日本野球の最高峰であるNPB球団と比べたら、正直、恵まれているとは言えません。大阪は少年野球や高校野球とチームがたくさんあり、球場の確保は簡単ではありません。トレーニング器具や新しいボールもそれほど揃っていません。そんな環境のなかで、プロ野球という夢を追う選手の手助けをできればと思っています。 ── GM補佐も兼務されているのですね。具体的にどんなことをするのですか。 藤井 球団経営において、協賛スポンサーを見つけなくてはいけません。一般企業のように商品があってそれを売り込むのではなく、夢を追いかける選手をあと押しし、応援協賛してくれる会社や人を探すわけです。
── 大阪ゼロロクブルズのセールスポイントは? 藤井 球団代表兼GMが谷口功一さん(元巨人ほか)、ヘッドコーチに浅井良(元阪神)、バッテリーコーチに小山桂司(元日本ハムほか)、そして監督が僕です。NPBで投手、捕手としてプレーしていた指導者が多く、バッテリーに関してはとくに力を入れて指導しています。4人ともNPBに人脈があるので、スカウトの方が見にきてくれるのは魅力だと思います。スカウトが見に来てくれなければ、何も始まらないですから。 僕自身は、現役の時にダルビッシュ有ら超一流の選手と一緒にやっています。打撃についても、先述したように裏方をしていたからこそ知り得た7年間の知識技能を、具体的に選手に還元してあげられるのがストロングポイントです。 ── 藤井さんの今後の目標は何になりますか? 藤井 応援しがいのあるチームづくりと、チームからひとりでも多くNPB選手を輩出したいです。3万人、4万人の前でプレーする景色を見せてあげたいですね。 藤井秀悟(ふじい・しゅうご)/1977年5月12日、愛媛県生まれ。今治西高から早稲田大を経て、99年ドラフト2位でヤクルトに入団。2年目に14勝を挙げ、最多勝を獲得。チームのリーグ制覇、日本一にも貢献し、ベストナインにも選出された。08年にトレードで日本ハムに、10年にはFAで巨人に移籍。さらに、12年にはFA移籍した村田修一の人的補償としてDeNAに入団。13年は開幕投手を務めるも、翌年は登板機会がなく戦力外通告を受ける。トライアウトを受けるもオファーがなく、現役引退。その後は巨人、DeNAでバッティングピッチャーを務め、22年から関西独立リーグの06BULLS(現・大阪ゼロロクブルズ)のGM補佐兼投手コーチに就任。23年から同チームの監督に就任
水道博●文 text by Suido Hiroshi