トランプ氏がウクライナ停戦への「強気」封印、ロシアの強硬姿勢が影響か…責任の矛先をバイデン政権に
【ワシントン=阿部真司】米国のトランプ次期大統領は7日の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵略の停戦を早期に実現できるとの従来の楽観的な見方を封印した。戦況で優位に立つロシアの強硬姿勢が影響した可能性がある。20日の大統領就任を前に、現実路線に軌道修正したとの見方が出ている。
トランプ氏は早期停戦に自信を示してきたが、記者会見では侵略について「バイデン(大統領)が招いた大失敗だ。私が大統領なら戦争は決して起こらなかった」と強調し、責任の矛先をバイデン政権に向けた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、トランプ氏周辺は、〈1〉現在の前線に非武装地帯を設ける〈2〉ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を少なくとも20年延期する代わりに、軍事支援は継続する――案を検討していた模様だ。欧州各国が平和維持部隊を派遣する構想も浮上していた。
トランプ氏がウクライナ特使に起用するキース・ケロッグ元陸軍中将も昨年12月、米FOXニュース系列の番組で、現状を「2人のファイターがいて両方が降参したいと思っている」と表現した。トランプ氏が「レフェリーの役割を果たせる」と述べていた。
トランプ氏周辺は、侵略長期化で露軍の損失も拡大していることから、ウクライナのNATO加盟延期を確約すれば、プーチン露大統領が交渉の席に着く可能性があると踏んでいた模様だ。
だが、プーチン氏は昨年12月の記者会見で、「(加盟延期が)我々にとって何の違いがあるのか」と、将来的な加盟も容認しないと強調。セルゲイ・ラブロフ外相も年末、タス通信に対し、NATO加盟延期などを柱とする停戦案には「我々は満足できない」と拒否する姿勢を示した。
強硬姿勢の背景には、侵略がロシア優位に進んでいるとの認識がありそうだ。
ウクライナが昨年8月に越境攻撃を開始した露西部クルスク州では、北朝鮮から1万人以上の増援が加わり、制圧地域の半分以上を奪還したとみられている。