登山の安全は何に気をつけるべきか? 野口健氏ら長野でサミット
長野県は8月11日の国民の祝日「山の日」制定を記念した「信州山岳サミット」を3日、松本市で開き、登山家の野口健氏や山小屋関係者らが登山をめぐる課題などを話し合いました。プロたちが登山の知恵を惜しげなく披露し、来場者は興味津々。一方で遭難防止や登山道整備の悩みもあり、登山者、山小屋、行政など関係者の協力態勢が欠かせないとの指摘が出ていました。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
8月11日の「山の日」にちなみ
北アルプスなどを擁する山岳県の長野県は、国の「山の日」とは別に7月第4日曜日(今年は24日)を県独自の「信州 山の日」と制定しています。サミットは山岳観光関連の事業促進に合わせて登山や山岳への関心を高めてもらう狙いで開き、野口氏をはじめ、北ア・涸沢ヒュッテ社長の山口孝氏、モデル/フィールドナビゲーターの仲川希良氏、信州大理学部教授の鈴木啓助氏と阿部守一知事の5氏が意見を交わしました。 コーディネーターの鈴木氏が「豊かな山に感謝しながら、いかに次の世代に引き継ぐか考えたい」と問題提起。野口氏は「男性的な北アルプスや懐の深い南アルプスなど、長野県にはあらゆる山がある」とその魅力を指摘。「多様な山と、そのふもとの暮らしを楽しむことができるのも大きな魅力」(仲川氏)、「身近に楽しめる里山もたくさんある。特に涸沢、穂高は登山者のあこがれ」(山口氏)などと、まず全国有数の山岳県であることを踏まえました。
山の高低より一瞬の気の緩みが大敵
登山者の安全対策では、山口氏が「ぜんそくや脳梗塞の薬を忘れて登山し、大変なことになったケースもある。普段使っている薬は必ず携行してほしい」「スケジュールに縛られず、悪天候のときは登山をやめて温泉でゆっくりして帰るぐらいの余裕が身を守ります」「山の急な寒い風は体温を急速に下げる。ツエルト(簡易テント)1枚と薄手のダウンジャケット1枚を用意してほしい。頭からかぶれば最悪の事態にはならない。ツエルトは畳めば缶ビールぐらいの大きさだから携行しやすい」などと山の知恵を伝授。 野口氏は「高い山は危ないと誰もが考えるが、海外の高山を登っている登山家が東京近郊の山で転落死した例もある。登はんを終えてザイルを片付けているときに転落した人もいる。上りの登山者に道を譲ったものの谷側に体を寄せたため不安定な岩に足をのせて転落したことも。山の高い低いではなく、一瞬の気の緩みが原因なんです」と説明。 また、装備について野口氏は「ヤッケなど上に着るものに凝っている人もいるが、むしろまめに着替えなければいけないインナー(下着)をたくさん持っていってほしい」とプロの目の付け所を紹介していました。 登山歴6年の仲川氏は「自分の力量をよく知っている人やガイドと登ることにしている。冬山で気象条件が悪いときに一呼吸置いてから登ってトラブルが避けられたこともありました」。