いつ起きてもおかしくない「首都直下地震」…〈地震に強い家〉2つの条件
2024年1月1日に起こった能登半島地震は「災害はいつ起きても不思議ではない」ということを改めて心に刻む出来事でした。そして今後、高い確率で必ず起こるとされているのが「首都直下地震」です。巨大地震を前に、これからマイホームの購入を検討する人たちはどうすればいいのでしょうか……防災士の資格ももつFP Office株式会社の梅田雅美FPに、地震に強い家を建てるためにはどうすればいいのか、解説いただきます。 東京都「地震で危ない街」最新ランキング…ワースト100
首都直下地震もいずれ必ず起きる!
能登半島地震は内陸の活断層による「内陸型の直下型地震」です。これは活断層や海のプレートが陸のプレートを圧迫することによる歪が原因で起こります。範囲は広くはありませんが震源が近く、浅い場合は、突然大きな揺れに襲われることが考えられます。過去の例では阪神淡路大震災、熊本地震などがありますが、どれも甚大な被害をもたらしています。 この「直下型地震」で心配されているのが首都直下地震です。発生確率は今後30年以内に70%と、明日起きてもおかしくない状況です。「首都」というと東京が震源地と思う方も多いのですが、「首都」の範囲は東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県を含む南関東地域が対象です。広範囲に及ぶので、首都直下地震のシミュレーションも数パターンが作成されています。被害想定は、季節や時間帯によって変わってきますが、人的被害は地震による直接的な建物の倒壊に加えて火災も原因となっており注意が必要です。 また、東京都では区市町村ごとに地域危険度ランクを出しているので気になる地域は調べてみるとよいでしょう(関連記事: 『東京都「地震で危ない街」最新ランキング…上位100』 )。
「安心・安全なマイホーム」の購入で考える2つのこと
マイホームの購入時、大地震に備えて「地震に強い家を建てたい/購入したい」と考えるでしょう。その際に考えるべきことは2つ。「場所」と「建物」。どちらも「地震に強いこと」が必須です。 1.地震に強い場所か 地震に強い場所かどうかは、建物を建てる場所はもちろん、周辺環境も重要。まずは購入希望地域のハザードマップ等でがけ崩れ、土砂災害、津波の被害の有無などを確認します。また、周辺に木密地域(木造住宅密集地域)はないか、倒壊しそうな建物が周りにないかなども確認し、広域避難所までの距離と道中の様子も実際に歩いてみることもお勧めします。さらに、学校や公園が近くにあるか、道幅は広いか、無電柱化が進んでいるかなどもチェック項目に加えたいところです。 地盤が気になる方は、役所などで過去の調査結果を確認しましょう。家を建てたい地域の大まかな地盤について知ることができます。実際に家を建てる場合は、建物の重量で地盤の補強が変わりますが、階数が増えれば重量も増し、元の地盤が弱い土地だと杭をたくさん打つなどの補強が必要となってきます。土地が安くても改良に費用がかかることもありますので、家を建てる場合は、事前に専門家に相談するようにしましょう。 2.地震に強い建物か 建物の耐震基準は、大きな地震をきっかけにその内容を見直してきた経緯があります。 1971年改正…きっかけは、1968年の十勝沖地震 1981年改正…きっかけは、1978年の宮城沖地震 2000年改正…きっかけは、1995年の阪神淡路大震災 また1981年の改正前を旧耐震基準、改正後を新耐震基準と分けています。2000年の改正では地盤の強さも考慮した基礎構造を義務化するなど、震度6強でも倒壊・崩落を防ぐように強化されました。これからマイホームを建てる場合は2000年改正後の「現行の新耐震基準」が適用となります。 建物を建築する際には「建築基準法」が適用されますが、地震の耐震性を評価する際には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保法)」という法律が適用されます。住宅品質確保法で制定されたのが「耐震等級」で、地震に対する建物の強度を表す指標で、建物の耐震性に応じて3つのランクに分けられています。 耐震等級1は現行の建築基準法で定められた最低限の耐震性を満たしていることを示します。震度6~7の地震にも1度は耐えられる耐震性ですが、その後大規模な修繕や住み替えが必要になると想定されます。 耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の耐震性を備えていると評価される建物です。「長期優良住宅」として認定され、震度6~7の地震にも耐えられる耐震性があります。その後、一部補修を行えば住み続けられる可能性が高いといえるでしょう。 耐震等級3は耐震等級の中でも最高ランク。耐震等級1と比較した場合に1.5倍の耐震性があり、震度6~7の地震にも耐えられます。その後、一部の軽微な修繕のみで暮らせることを想定しており、災害時の救護活動の拠点となる消防署・警察署などの建物はこの基準です。 近年は耐震等級3を標準レベルとして設計をするメーカーが増えています。等級が上がると費用も増すので、住宅を購入する場所や危険度などを踏まえて検討するとよいでしょう。 耐震性とともに確認したいのが、耐火性で「延焼のしにくさ」を等級で表しています。家の耐火性能は「(1)延焼の恐れのある部分にある開口部の耐火性能」「(2)延焼の恐れのある部分にある開口部以外(外壁、軒裏など)の耐火性能」「(3)マンションなどの界壁・界床などの耐火性能」の項目で、それぞれの耐火性能がどのくらいあるのかを示します。 開口部、つまりドアや窓の耐火性能は、60分以上火炎を遮るもの(等級3)、20分以上火災を遮るもの(等級2)、その他のもの(等級1)と表示されます。外壁、軒裏などの耐火性能は、20分以上(等級2)、45分以上(等級3)、60分以上(等級4)の等級1~4に分かれます。 ちなみにマンションは一般的に耐火構造で、隣住戸や上下住戸との境にはコンクリートなど60分以上の遮炎性能があるものが使われ、最高の「等級4」となります