子どもや外国人を阻む「漢字の壁」、読書の世界広げる「ルビ」普及に取り組むネット証券創業者 私財1億円で財団設立、無料ソフトを年内配布
▽会社の事業とは一線を画し、NPOや国際人権団体が参加 ふりがなの大切さを周囲に話したところ「確かにそうだよね」、「盲点だった」と共感する声が多かった。これが活動への背中を押した。 マネックスグループは「個をエンパワーメントする(力づける)」を掲げ、教育事業を手がける子会社がある。ふりがなを振る活動の根本的な考えもマネックスグループが目指す延長線上にあるが、松本さんは「社会にとって良いことなので、ビジネスではなく非営利で行う方がいろいろな立場の人が参加しやすい」として財団を設立し、会社の事業とは一線を画した。 松本さんの問題意識は社会全体にも向く。「漢字が読めなくて社会になじめず、犯罪につながることもある。それが社会の不安定化につながる」と話す。目指すのは、大人が読むことを想定した文章でもふりがなが振ってあるような「インクルーシブ(包摂的)で優しい社会」だ。ルビ財団の活動には子ども関連のNPOや国際人権団体、印刷会社の代表らが集まった。
▽自動でルビを付けるソフトを開発、年内に無償配布へ ルビ財団は具体的な活動として、ウェブサイト上でボタンをクリックすれば、文脈に応じて漢字に自動でふりがなを付けたり消したりできるソフトの開発に取りかかっている。年内に自治体などへの無償配布を始める。財団のホームページにはすでに同様の機能を付けた。 自治体に対しては行政手続きや防災に関する説明文書、広報誌などでふりがなの活用を訴える。日本に住む外国人は増えている。ルビ財団の伊藤豊代表理事は「外国人を含めあらゆる人が暮らしやすい町だというアピールにもなる」と話している。 企業に対しても、多様な人材が力を発揮できるよう環境を整備する「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の一環として、取り組みを後押しする。ルビ財団のメンバーの名刺には全ての漢字やカタカナにもふりがなを付けた。伊藤さんは「共感した企業は名刺だけではなく会社案内にも広げてほしい」と話す。