【解説】万博をめぐる混乱の2023年 ①『協会頼み』で費用ばかりが増大 ②国・府・市と責任の所在見えず ③『タイプX』は大量発注が裏目に 課題噴出の原因は事実上働かなかったチェック機能の問題か
■責任の所在は? 協会事務総長「責任といわれても、何をもっておっしゃるのか…」
こうした過程でみえてきたのは、巨額の公費を投じるイベントを「万博協会任せ」にして「誰が責任をとるか」ということが極めてあいまいになっている運営体制です。 物価高騰は2022年から続いており、会場建設費が計画どおり1850億円に収まるのか、2023年の年明けにはすでにかなり微妙な状況となっていました。しかし、関係者に取材すると判で押したように「万博協会は1850億円で収める、と言っている」と繰り返しました。 2度目となった会場建設費上振れの発表(10月)では、万博協会が多数のメディアの前で「必要な増額を国と府・市、経済界に伝える」という形式が取られました。結局、建設費は当初(1250億円)の1.9倍にあたる2350億円に膨らみ、そしてその悪いニュースを伝えるのは協会の役回りとなりました。 記者会見で増額の責任を問われた協会事務総長は、主な要因は物価上昇やコロナ禍などにあると説明し「想定外のこと」「責任といわれても、何をもっておっしゃるのか…」と苦笑いをしてみせました。 知事である吉村氏と、大阪市長である横山英幸氏はともに、協会に14人いる「副会長」の役職を務めています。もっと早い段階で「費用上振れ」などの兆候をつかむことはできたのでは、との指摘があります。今年11月、報道陣からこの点を問われると、吉村氏は「何とか1850億円の枠内で収まっています、という(協会からの)報告なので、それ以上僕からの確認はなかった。不十分と言われれば、確かに不十分だったかもしれない」と認めました。 万博に関する最終的な支出の管理やチェックは誰がしてきたのか―。国、府・市、万博協会と多くの当事者がいるのに、対応はいつも後手に回り、責任の所在は最後まであいまいなままに見えました。
■2024年はいよいよ開幕1年前
参加国からやってきた海外の担当者たちを取材すると「母国の文化を世界に発信したい」「万博を投資を呼び込むきっかけにしたい」と熱のこもった声がかえってきます。一方、そんな期待の大きさとは裏腹に、この1年間の国内の万博準備の迷走ぶりには消沈してしまいます。 2024年は、いよいよ開幕の1年前です。残された時間は多くはありません。コストを上振れさせず、問題があれば公表し、予算の範囲内で厳格に管理できる運営体制が必要です。来場者に楽しんでもらえる万博を実現するためには、何よりも「責任の明確化と、情報公開」が欠かせません。 (ABCテレビ・行政担当キャップ 尾崎文康)