社説:石破「少数」政権 逆境を新たな政治の好機に
与野党が政策を競い、開かれた議論を通じて一致点を探る議会政治の姿を取り戻せるか。 少数与党である石破茂政権の運営は正念場の一年となる。 昨年の臨時国会では補正予算案の28年ぶりの修正など、与野党伯仲による一定の変化が見られた。だが、先送りされた懸案も多く、「熟議の国会」は一歩を踏み出したに過ぎない。 積み残した課題にどう道筋をつけ、国民本位の政治へ成果を出すか。24日開会予定の通常国会での論戦が試金石となる。 最大のテーマは政治改革だ。企業・団体献金を禁止する野党案を自民は拒み、結論を持ち越した。政治倫理審査会でも、派閥裏金事件に関与した自民議員らは責任逃れの姿勢に終始し、実態解明は進んでいない。 それでも石破氏は、信頼回復は「国民が判断すること」と人ごとのように述べただけだ。 国会は証人喚問などで事件の真相に迫らねばならない。「政治とカネ」の問題の根本にあり続ける企業・団体との癒着の温床を今度こそ断つよう、石破氏の決断を求める。 過去最大の総額115兆円に及ぶ新年度政府予算案を巡る論戦も注目される。過去最高の税収も大きくはみ出し、28兆円超の国債で補う借金依存が続く。 人口減と高齢化が進む中、年金改革などで社会保障の受益と負担のバランスを図るのは喫緊の課題だ。 所得税の非課税枠引き上げで与党は「123万円」の水準で税制大綱をまとめたが、国民民主党はさらなる引き上げを要求する。政局優先や人気取りでなく、税の公平性や地方自治体の税収減対策など全体像の提示が欠かせない。 防衛費「倍増」のために与党が目指した所得税増税も時期決定を延期した。財源の裏付けなき軍拡は身の丈を超えている。「自民1強」下で国民への説明も不十分なまま進めた点を反省し、必要性から精査すべきだ。 石破氏は臨時国会での所信表明で、東アジアの厳しい安全保障環境や抑止力強化を強調したが、詳しい説明には踏み込まなかった。 20日にはトランプ米大統領が就任する。多国間協調を軸とした外交を進める構想力と実行力が一層求められる。 持論の地方創生や防災関連の政策に比べ、経済・財政では石破氏の考えは明確でない。「経済あっての財政」と言うだけでは、持続可能な社会や将来の安心が見えてこない。 春の予算成立後から夏の参院選にかけて、政局が流動化するとの予想もある。与党は党利党略に走れば、国民の手痛いしっぺ返しを受けよう。野党もばらまきを助長するような振る舞いを慎み、責任ある政治を担う姿勢を示してもらいたい。