1日1000個売れる静岡市「あみ焼き弁当」の底力 深夜3時まで営業、しずおか弁当の名物「豚あみ焼き弁当」695円
タレの味付けは静岡の人が好むうなぎのタレを参考にした。そのまま使うと甘みが強くて肉と合わないため、塩分をやや強めに調整している。ベースとなる醤油のコクと甘味、塩味がバラ肉の旨みを引き立てて、箸が止まらなくなるのだ。その配合はまさに黄金比といっても過言ではない。 そういえば、うな丼やうな重はうなぎを盛り付ける前ご飯にタレをかけるが、あみ焼き弁当はその逆だった。つまり、ご飯の上に肉をのせてからタレをかけていたのだ。これにも理由がある。
「肉の上からタレをかけると、弁当箱の隅へ流れていって、底へ溜まるんです。肉の下にあるご飯にはタレがほとんどかからないので、まずは白いご飯と肉を、中盤から後半にかけてはタレがかかったご飯と肉という具合にお楽しみいただけます」(森谷さん) ■コロナを機に開店時間を2時間前倒し あみ焼き弁当が店の名物となり、ひいては静岡のソウルフードといわれるようになったのは、味だけではない。一般的に弁当店の営業は夜遅くても23時頃までだろう。ところが、静岡弁当は冒頭でも触れた通り、深夜3時まで。この異常なまでに遅い閉店時間と葵区両替町という静岡市内最大の繁華街というシチュエーションがヒットを生んだのである。
「深夜3時まで店を開けているのは、店の周りにあるクラブやスナックなどで働く方にも利用していただけたらと思ってのことです。実際、夜遅くに仕事を終えた方が買いに来られますし、夜の時間帯は遊びに行く店の女の子たちにお土産として購入される方も多いです。飲んだ帰りに買って、自宅で食べるという『〆弁当』という習慣も生まれました」(森谷さん) もちろん、昼間もサラリーマンを中心に多くの客が訪れるが、しずおか弁当は夜に主眼を置いた戦略であみ焼き弁当の知名度を高めていったのは間違いない。ところが、2020年のコロナ禍で状況は大きく変わる。全国の繁華街がそうだったように、平日でも多くの人々で賑わっていた両替町も例外ではなく、街から人が消えてしまったのだ。