ヨーロッパで止まない「反EU」の風 極右候補に僅差の勝利、既存政治にノー
4日にオーストリアで行われた大統領選挙ではリベラル系の候補が極右政党出身の候補に勝利し、同じ日にイタリアで行われた国民投票では憲法改正に「否決」という答えを出された首相が辞任する意向を表明した。景気から難民問題まで、EU加盟国には様々な問題が山積しているが、各国では既存政治への反発とポピュリズムの台頭が顕著になりつつある。来年はドイツやフランスでも選挙が行われるが、EUの存在意義は変わってしまうのだろうか? 【写真】「一つの欧州」終わりの始まりになるか? 英国でEU国民投票
極右政党出身の大統領誕生は免れたが……
4日にオーストリアとイタリアで、大統領選挙と国民投票がそれぞれ行われ、オーストリアの大統領選挙ではリベラル系のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏が、オーストリア国内外で「極右政党」として知られる自由党のノルベルト・ホーファー氏を僅差で破った。EUで初めてとなる極右政党出身の国家元首の誕生が危惧されていたものの、結果は約3ポイントの僅差でリベラル系のファン・デア・ベレン氏が勝利した。 イタリアでは長期的な政策を円滑に進める目的で、上院の権限などを縮小することを問う国民投票が実施されたが、これはマッテオ・レンツィ首相の進退を問う信任投票的な意味合いも強く、有権者のレンツィ政権に対する思いを測るバロメーターでもあった。 第二次世界大戦終結後から現在までにすでに政権交代が60回以上あったイタリアでは、将来を見据えた政策を実施することが困難だという指摘が長年にわたって存在しており、レンツィ首相は上院の定数削減などによって、今後の政策が円滑に行えるという考えから憲法改正の是非を問う国民投票の実施に踏み切った。しかし、イタリアの有権者が突き付けた答えは「ノー」であった。国民投票の結果を受けて、レンツィ首相は5日に辞任する意向を表明している。 オーストリアとイタリアで行われた大統領選挙と国民投票。それぞれ、難民問題と憲法改正が大きな争点となっており、一見するとこれら二つには共通点はなさそうだが、EUという共同体が崩壊する発火点になる可能性という点では共通している。オーストリアとイタリアでは何が問題になったのだろうか?