大成建設が平和不動産をグループ化…アセット(資産)を狙ったM&A戦略の裏側(重道武司)
【経済ニュースの核心】 「丸の内(東京)の大家さん」と言えば三菱地所だ。丸ビルや新丸ビルをはじめ幾多の優良物件を大手町を含む同エリアに所有する。これに対し「兜町の大家さん」と呼ばれているのが、業界中堅の平和不動産。東京証券取引所が現在入居するビルのオーナーでもある。 りんたろー「2億円タワマン」ローン購入に驚きの声 売れっ子でも銀行審査に落ちる境界線は その平和不動産を10日スーパーゼネコンの大成建設がグループ化した。平和不の実質筆頭株主で資産運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントと、資本提携先の三菱地所からそれぞれ保有平和不株の全部ないし一部を約292.22億円で取得。シンプレクスに代わり20.12%を出資する筆頭株主となり、持ち分法適用会社化に踏み切った。 平和不が兜町やそれに隣接する茅場町、札幌地区などに持つ不動産を活用して再開発事業を促進していくのが狙い。資本業務提携も締結し「建設事業とのシナジー追求」(関係者)を目指す。 シンプレクスからは同社が保有する16.3%の平和不株すべてを273.96億円で買い取った。一方、三菱地所からの取得は1.09%分(取得額18.26億円)で、大成が従来から持つ平和不株と合わせると持ち株比率は2割を超えるかたちとなる。 大成はM&Aを成長戦略の柱の一つに掲げる。23年11月には首都圏などで設計・施工を手掛ける佐藤秀(東京・新宿)を買収。同12月には中堅ゼネコンのピーエス三菱を傘下に収めた。ただ今回の資本提携は従来のM&Aとはいささか色合いを異にする。これまでの“標的”が同業や建設関連領域中心だったのに対し、アセット(資産)をターゲットに位置づけているからだ。 ■バブル期のゼネコンを想起 それだけに市場関係者の一部からは「何やらバブル期のゼネコンに逆戻りしたかのような雰囲気が伝わる」といった懸念も漏れる。自らが資金を調達して土地を購入。建設プランを作成して実行に移す。いわば自分で自分の受注を作り出す事業モデル「造注」──だ。 バブル期。造注にのめり込んだゼネコン各社は金融機関から多額の借金を重ね、ゴルフ場開発などに血道を上げた挙げ句、土地神話の崩壊で深手を負った。「その二の舞いを想起させる」(証券筋)というわけだ。 大成が手にした平和不株の取得価格は単純計算で1株4700円。直近の平和不株の終値よりおよそ25%も割高だ。「高値掴み」の声もくすぶる。 (重道武司/経済ジャーナリスト)