新潟県・片貝まつり―「世界で一番幸せな花火」の物語
祝長女 笑那(えな) 爆誕 超安産で生まれてきてくれてありがとう 片貝で生まれ育った26歳の長原魁(かい)は、長女誕生を祝うために尺玉二発を打ち上げた。自分が生まれた時に両親が花火を奉納してくれたように、子どもが生まれたら花火を打ち上げようと考えていた。「打ち上げ費用は安くはないが、とても満足している」と言う。
祝白寿(99歳) 市川恵美子 ばあちゃんおめでとう 大好きな花火 みんなであげるね 市川英雄(79歳)は99歳の白寿を迎えた母親のために、きょうだい4人と10人の孫でスターマインを打ち上げた。母親は施設に入っているが、元気な頃は祭り会場の桟敷席の最前列で花火を見ていた。 「最初はきょうだいだけで小さな花火を打ち上げるつもりでした。でもおばあちゃんの花火もそろそろ最後だろうということで、孫たちにも協力してもらってスターマインに奮発しました」 尺玉一発の打ち上げ費用は約7万2000円。打ち上げ時刻を指定できる「番外」扱いは、尺玉2発分、14万3000円以上が必要だ。連射連発のスターマインともなれば、20万円を超える。今年の片貝まつりでは、300近い個人や企業、団体など(一部、地域外からも含む)が花火を奉納した。
主役は中学の「同級会」
感謝と祈願を込めた花火番付のメッセージを見ていると、これほどまでに幸せな花火大会は世界のどこにもないのではないかと感じる。 打ち上げの前に読み上げられる奉納者の思いにつかの間心なごませた後に、ドドーンと重低音を響かせ華麗に花開き、散る様を堪能する。その独特の間と余韻は、片貝まつりでしか得られないものだ。
片貝では、同学年の結束が固い。中学卒業と同時に「同級会」を結成し、高校を卒業すると「花火貯金」の積み立てを始める。20歳になる年の片貝まつりで、初の打ち上げ花火を奉納し、以降、女性33歳・男性42歳の厄年、50歳、60歳の還暦と、人生の節目にお金を出し合い花火で祝う。 今年の新成人「桜華会」は、積立金と家族や地域の協賛を合わせて500万円超を調達、華々しくスターマインを打ち上げた。