たばこ依存は病気…根性や会社命令ではやめられない、禁煙治療の現在地と課題「薬で治療ができるという認知が広がってない」
■根性では無理、だが禁煙治療に課題も「薬に怪しいイメージがついてしまったことが残念」
このような禁煙補助薬の仕組みを知ると、やはり禁煙も医学の力を借りるべきであることがよくわかる。同医師も「根性でやめようとしても成功度は低い」と話す。 「ただ、これらで100%禁煙が成功するとは限りません。たばこ依存には、精神依存と身体依存があります。身体依存は薬で抑えられますが、日常生活で喫煙がルーティンになっている精神依存の場合は、散歩したり氷をなめたりなど喫煙行動の置き換えをしなければなりません。また飲酒は欲望を開放する作用があるため、たばこを吸いたくなってしまうことがあるので注意が必要。大切なのは、手が届く場所にたばことライターを置かないことです。とはいえ、それでも精神依存というのは染み付いているもの。禁煙に失敗して受診を繰り返す人は本当に多いのです。そんな方には、医師が生活や行動を聞き出して、自己分析のお手伝いをしながら習慣を修正していきます」 まさにカウンセリングのようだ。日常生活に根付き、普通に購入できるからこそ、たばこが依存症の一種であることは気づきにくい。ただ、そこから抜け出すためにはこれだけのステップが必要なことを考えると、なかなかに厄介。禁煙外来で治療することができ、補助してくれる薬がある…まずはその知識を得ることが大切だ。 「禁煙治療において現在の課題は、まだ薬で治療ができるという認知があまり広がってないこと。また、『チャンピックス』の発がん性物質検知の情報により、SNSやネット怪しいイメージがついてしまったことがとても残念です。海外後発品の『バレニクリン』も同様に懐疑的に見られがちですが、きちんと第三者機関による安全性を確認したうえで処方しています。そもそもたばこの発がん性の高さは言うまでもありませんので、禁煙を達成できる手段があることは医学的な面からも大変意義深いことです。禁煙治療ができる、それを助ける薬に問題はないことなど、認知を広めていきたいです」 <医師プロフィール> 日本内科学会認定 内科専門医。市中病院、国立循環器病研究センターで内科疾患をはじめ心臓・血管病の高度急性期医療に従事。現在は幅広い内科的知識を活かし、質の高いプライマリーケアの実践や医療情報の提供を行っている。 (文:衣輪晋一)