令和では味わえない「ドキドキ感」…昭和キッズを夢中にさせた『川口浩探検隊』の圧倒的インパクト
■ナレーションのインパクト、赤字のテロップも演出効果抜群
ここからは『川口浩探検隊』がどのような内容だったのか、振り返ってみよう。取り上げるのは「謎の原始猿人バーゴン」の回である。 まず、「謎の原始猿人バーゴン」が紹介されている外国の新聞記事が登場する。当時のブラウン管テレビは画像が悪く、モノクロの新聞に載っているバーゴンはさらに見えにくかったであろう。それがかえって子どもたちに恐怖を与えていた。 その後、バーゴン発見を目指して秘境のジャングルへと向かう川口探検隊。隊員のなかには現地在住の外国人も参加しており、それがまたリアリティと緊張感を醸し出している。 ジャングルに向かうトラックの荷台には大勢の人々が乗り込んでおり、砂埃をあげながらトラックが走り抜けていく物凄いスピードに驚かされる。今、振り返るとまさに昭和の時代を象徴するような光景だ。 やがて日も暮れてきたので、キャンプの準備をする隊員たち。そのとき隊員の1人が「川口さん、何か見えますよ!」と叫ぶ。指さす方向を見ると丘の上に謎の人影が……。そして「はたして我々の探し求める猿人なのであろうか!?」という緊迫したナレーションが入るのだ。 『川口浩探検隊』は、川口さん自身が登場するものの、番組の進行を支えたのは声優・田中信夫さんのナレーションである。彼のシリアスでよく通る声は、番組に欠かせない存在だった。 「と、その時である!」「だが我々は見た!」「いったい誰がこのような罠を!?」といったフレーズは緊張感を高め、視聴者を一瞬たりとも画面から目を離せなくさせた。 さらに、オープニングに登場する赤字の大きなテロップは圧倒的なインパクトを放ち、それを目にした瞬間から“最後まで見届けたい”と思わせる力を持っていた。 このように本作は、ナレーションと演出の巧みさが視聴者を魅了した番組であった。
■視聴者を最後まで魅了する演出がスゴイ!
「謎の原始猿人バーゴン」の続きに戻ろう。 その後もジャングルを進む探検隊。洞窟内で突然崩れ落ちてくる岩や、登ろうとした崖の上に大蛇が待ち構えているなど、次々とハプニングが起きる。極めつけは探検隊の最後を歩いていた人が罠にかかり、何者かの策略により空中に吊るされてしまうのだ。 最終的に探検隊は、秘境の川でワニと格闘する猿人バーゴンを発見する。探検隊たちはバーゴンを確保して無理やりヘリコプターに乗せ、研究室へと連れて行くのであった。 大人になった今振り返ってみると、確かに当時の父が半信半疑になっていたのもうなずける。次々と起こるドラマがデキすぎているからだ。 たとえば岩が崩れ落ちるシーンでは、岩のアップと、それに格闘する川口さんの様子が交互に映し出されており、ドキュメンタリー作品ではあり得ないほど細かなアングルで撮影されている。 しかし、それが本当であってもそうでなかったとしても、当時の子どもたちを夢中にさせたことは事実だ。謎の生命体を追う動画は、現在でもYouTubeなどで数多く存在するが、『川口浩探検隊』ほどのドキドキ感は味わえないように思う。 この番組は、「もしかしたら、こんな生物がいるのかな……?」「こんな場所があるのかも……?」という希望や疑問を視聴者に抱かせた。そして、それが将来冒険家になりたい、あるいは謎の生物を解明する科学者になりたいという夢や希望を育んだとも言えるだろう。 『川口浩探検隊』は、ただのエンターテインメントではなく、子どもたちの想像力を刺激し、夢を描かせる特別な番組だったように思う。 一部では“ヤラセ”とも揶揄された『川口浩探検隊』。しかし当時の子どもたちに絶大に支持され、インパクトを与えたことは確かである。 また印象に残るオープニングタイトル、不安と好奇心を煽る巧みなナレーション、つい目が離せなくなるような番組展開は、今の人気テレビ番組やYouTube動画にも通じるものがある。 そうした点を考えると『川口浩探検隊』は現代のエンターテインメントの先駆け的存在であり、その影響力は今なお語り継がれるべきものだろう。なお、『川口浩探検シリーズ』は、現在でも「TELASA」などの動画配信サービスで見ることができる。
でかいペンギン