スーパーフォーミュラ初ポール獲得のKCMG、舞台裏で行なわれていた配置転換。ベテランエンジニアが“福住担当1戦目”で得た手応えと今後の展望
苦手な富士で手応え掴んだ田坂エンジニア。しかし「ダメになった時が重要」と福住
今季からトヨタ陣営に移籍してKCMGのシートを掴んだ福住は開幕当初からまずまずのパフォーマンスを見せており、開幕戦で6位、第2戦で8位に入ったが、チームとしてはトップ集団と争うための“あと一歩”のパフォーマンスを課題としていた。まさにそこが、富士テストでのテーマとなった。 テストでは、田坂エンジニアが福住からのコメントに耳を傾け、セットアップについて考えを巡らす。その傍らには松田アンバサダーがおり、『SFgo』で各車両の動きを観察しつつ、現役ドライバーならではの視点も織り交ぜながら、ニュータイヤの使用本数などセッションの細かいオペレーションについて田坂エンジニアにアドバイスをしていたようだ。 鈴鹿などのハイダウンフォースサーキットは「セットアップのイメージが湧きやすい」とする一方で、「ダウンフォースが少ない富士は元々あまり得意ではなかった」と語る田坂エンジニア。しかし「テストの最後の最後で『こっちの方向性かな?』という兆しが見えた。今回持ち込んだのは、その兆しを信じてそれをワンステップ進めたもの」だったという。 結果的に、その方向性のセットアップにより予選・決勝共に高いパフォーマンスを発揮した福住号。富士では10月にも2レースが開催されるが、そこに向けてセットアップの方向性を定めることができたため、田坂エンジニアも安堵したようだ。 「あと2レース富士があるので、次来る時のイメージとして方向性を定めておきたかったんです。そうじゃないと次の富士でどう持ち込むか悩んでしまいますから」 田坂エンジニアはそう語る。 「結果的にポールも獲れて、決勝セットも速かったし、俺個人的にはハッピー。やっと富士が分かりかけてきたなと。当然、気象状況が変わると『あれ?』となる可能性がありますが、暑い時期で方向性を探せたのは大きかったですね。涼しくなればダメなところでも(空気密度の変化によるダウンフォースの増加で)グリップしてくれる方向になるので」 次戦以降に向けて明るい兆しが見えているKCMGの8号車だが、福住は「ダメになった時が重要」だと冷静だ。うまくいかない時こそ、チームの底力が問われると感じているからだ。 福住は次のように語る。 「問題なのは、うまくいかなくなった時です」 「そこでどう(解決策を)見つけて脱出するかにおいて、エンジニアさんとの相性やコミュニケーションが必要になってきます」 「特に日本のレースでは、ドライバーもドライビングのことだけでなくクルマの知識を持っていないとダメだと思っているし、エンジニアさんもダメな時にどこまで細かくデータを見て分析して、正解を見つけられるかが大事になってくると思います。うまくいっていると良く見えますが、ダメになった時にどう脱出するかは大事ですね」
戎井健一郎
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