スプリンターズSに参戦する香港馬2頭は買いか? ふたりの調教師の反応から見た本気度
ン師は、開業3シーズン目。41歳の若き気鋭で、昨シーズンはシーズン最終日の最終レースまでリーディングの座を争っていた。彼もまたアシスタント時代に、2015年の高松宮記念をエアロヴェロシティで制覇。日本競馬のことはよく知っている。 ただ今回、香港でGI勝ちのあるビクターザウィナーは国際レーティングの基準を満たしており、JRAから輸送費の補助があったが、ムゲンはそれを満たしておらず、「(JRAからの金銭的な)補助があれば、うれしいんだけどね」と話していたン師の希望は叶わず、完全に自己負担での日本遠征となった。それも、帯同馬も伴って、である。 「開業初年度にドバイに遠征をした際も、出走する2頭での遠征でした。万全を期すためには、帯同馬の存在は大きいです。また、ふだんのムゲンはレース後、毎回従化トレセン(中国・広東省)で調整しますが、従化から香港、香港から日本と、輸送の回数によるリスクを増やしたくなかったので、今回は6月のレース後もシャティン競馬場に残って調整してきました」 そう語るン調教師は、シャム調教師にもヒケを取らない入念さ。しかも先述のとおり、遠征費用は"自腹"のうえ、遠征の間には2頭分の厩舎スタッフが香港を留守にすることとなる。それだけ、このレースにかけている、ということだ。 近年はマイル、中距離戦線での活躍も目立つ香港馬だが、今なお"スプリント王国"の名は揺らいでいない。日本馬も好メンバーがそろった今年のスプリンターズSだが、ハイレベルな舞台で揉まれてきた2頭の"刺客"からも目が離せない。
土屋真光●取材・文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu