トランプ―プーチン“幻の電話会談”が戦争激化の呼び水に、核の恫喝で領土拡大目指すロシア
トランプ氏はこの時点ですでに、70人あまりの各国の指導者らと電話会談を行っていたといい、プーチン氏と会話をしたとしても決して不思議ではない。 ただ、一方でロシア側が、そのような事実を公に認めるメリットは現時点ではあまりない。交渉の内容が表に出ることは、必ずしもロシアに優位な状況を生み出すとは限らない。またトランプ氏は、現時点でまだ大統領ではなく、あくまでも〝私的〟な会話にすぎないとの説明も成り立つ。 ロシア側が電話会談の内容を否定するということに対し、トランプ氏側も目立った反論をしていない。両者の間では、ロシア大統領府が会談を否定することも、了解されていた可能性がある。 ただ重要なのは、トランプ氏側から、ウクライナ戦争終結に向けた新政権の一定の方向性が示されたということだ。トランプ氏は、就任初日は無理でも、早期のウクライナ戦争決着を政権の最重要課題の一つと捉えている。政権が発足すれば、即座に停戦に向けた動きが加速すると予想される。
ロシアはウクライナのNATO加盟阻止要求
プーチン氏は、〝幻の電話会談〟が行われたとされる7日の夜にはロシア南部ソチで行われた国際会議に登壇し、今後の交渉に向けた自身の意向も明確に示していた。 プーチン氏は「たとえ就任式の前でも、会って会談する用意がある」とトランプ氏に秋波を送りつつ、そのような会談は「実際の〝領土の上〟における現実に根差したものでなくてはならない。さらに、イスタンブールにおける合意を土台としなくてはならない」と強調してみせた。これは、ロシアによる侵攻開始から間もない22年3月末に、トルコ・イスタンブールでまとまりかけたとされる停戦合意案だ。 この協議については、ロシア軍が占領、撤退した地域で地元住民が虐殺されていた実態などが浮かび上がり、最終合意に至ることはなかったが、その内容は関係国がウクライナの安全を保障することと引き換えに、ウクライナのNATOへの加盟断念が盛り込まれていたとされる。ロシアの要求に大きく沿った内容であり、ロシアはこのラインにまで交渉を引き戻したい考えだ。 さらに、「領土の上の現実」とは、ロシアによる〝ウクライナ領土の占領を認めろ〟との意見にほかならない。ロシアは、ウクライナのNATO加盟を断念させつつ、ウクライナ東・南部の占領を国際社会に認めさせる構えだ。