Wi-Fiより高速・低遅延・大容量でつながる「ローカル5G」が区役所サービスを向上させる
実際に遠隔サービスの様子を見せていただきましたが、画面の中のスタッフの方が遠隔地にいるとは思えないほど、来客との会話もスムーズにできていました。もし遅延があると自然なやりとりができず、たとえば年配の方などは「機械と会話している」と感じてしまい、このサービスを使わなくなってしまうでしょう。ローカル5Gの低遅延というメリットはこのような用途にも向いているのです。
今回は第二期のテストということで、同じ基地局からDAS(分散型アンテナシステム/Distributed Antenna System)を使って4階まで電波を到達させるデモが行われました。建物の中はWi-Fiでも5Gや4Gでも電波が伝わりにくいものです。DASは基地局から光ファイバーケーブルを使って親機経由で子機を接続し、その先にアンテナを設置することで屋内の5Gエリアを拡張できます。今回のテストでは東芝インフラシステムズのDASシステムが使われました。
たとえば来客が区役所に入り、1階に設置されたnewmeで目的の窓口の場所を質問します。遠隔スタッフが「4階に進んで下さい」と伝えたら、来客はエレベーターに乗り4階へ進みます。そしてエレベーターを降りると4階にもnewmeが設置されており、「4階に来られましたね、それでは右側に進んでください」と的確な案内をしてくれるのです。この案内を人間がやるとなると、1階と4階で連携を取る手間がかかりますし、人員も多く必要になります。newmeをローカル5GとDASで接続することで、ビルの複数階でのリモート対応が容易に行えるようになるわけです。
なお大田区役所でのテストは2024年12月20日まで実施されました。ちなみに電波は5G NRのローカル5G向けSub6(4.6GHzから4.9GHz帯)。avatarinのソーシャルソリューション部部長、筒雅博氏によると同社は他にも千歳空港などでローカル5Gの実証テストに参加しているとのこと。一般消費者向けの5Gの普及はまだこれからですが、市民サービスや空港・駅そしてオフィスや工場向けのローカル5Gも着々と普及が進んでいるのです。
■ 山根康宏 やまね やすひろ 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1,800台に達する。 公式サイト:http://www.hkyamane.com/
山根康宏