’24政治決戦(1)「ネオ55年」から自公プラスαへ
迫られる与党体制の再構築
与党で過半数確保を選挙の勝敗ラインに設定した以上、石破をはじめとする自民党執行部の責任問題は避けられない。石破は投開票日翌日の28日の記者会見で、続投の意向を表明。これより先、公明党との党首会談で自公連立政権を維持していく方針を確認した。 11月7日ごろに想定されている特別国会召集までに落選した閣僚や、引責辞任した小泉進次郎選挙対策委員長の後任人事など、まず足元を固めようとするのだろうが、それだけで済むのかどうかだ。 すでに選挙敗北の責任を取っての退陣論が出ている。今後、総裁選で石破との決選投票を戦った高市早苗を後継総裁の念頭に、25年夏の参院選もにらみながら党内対立が深まる可能性がある。さらには森山裕幹事長が続投の意向を示していることも非主流側から批判を招くのは必至だ。 石破続投には党内手続きをへたうえで、衆院本会議での首相指名選挙で選出されなければならない。1回目投票で過半数にとどかなければ、上位1、2位の決選投票に持ち込まれる。過去には、大平正芳、福田赳夫と党内から2人の首相候補が出て衆院本会議の決選投票でケリがついた79年の40日抗争のようなドロ沼の権力闘争に発展した例もある。 党内には、石破総裁の選出から新体制の過程で、それぞれ石破と高市を推した勢力で主流―非主流の色分けがはっきりし、感情的なしこりが残っている。今回の衆院選で旧安倍派の幹部らが非公認になり、いわゆる裏金議員も比例代表との重複立候補が許されず小選挙区単独となった結果、44人中27人が落選した。かれらの間には不満のマグマが充満している。 石破退陣の有無にかかわらず、少数与党の自公両党は体制の再構築を迫られる。追加公認などを含めても衆院で過半数に届かない現状では、予算も法律も成立しない。第2党の立憲民主党が中心となってオール野党で政権を樹立し政権交代を実現しない限り、比較第1党の自民党が公明党に加え、ほかの会派も取り込んで政権を担当することになる。 政策面で自民党との距離で近いのは国民民主党と日本維新の会だ。少数与党政権を再構築するには(1)閣僚を出して連立政権を樹立するのか、(2)閣僚は出さなくても政策協定を結んで与党として連立政権に加わる閣外協力とするのか、(3)政策ごとに法案の成立などに協力する部分連合(パーシャル連合)とするのか──のいずれかのやり方がある。 国民民主、維新両党とも自公だけでなく立民との連立も否定している。石破自身も28日の記者会見で「現時点では野党との連立は想定していない」と述べた。となると閣外協力や部分連合のかたちをうまく整えられるのかがカギだ。そうした調整役をだれが担うのかだが、相当な政治的手腕が必要になる。失敗すれば政権の投げだしにつながる。