なぜ南アはウェールズとの接戦制し決勝進出を決めたのか?
ラストワンプレーはスクラム。敵陣22メートルエリア左で自軍ボールを得た南アフリカ代表が、一枚岩となり左からせり上がる。笛が鳴った。プレッシャーに苦しんだウェールズ代表が故意にスクラムを回し、イリーガルホイールの反則を取られた。 67750人ものファンを集めた横浜国際総合競技場のオーロラビジョンに映るのは、大喜びする南アフリカ代表ベンチの面々。スタンドオフのハンドレ・ポラードは、ペナルティーキックに備えている。残り時間を確認したのだろう。ジェローム・ガルセス・レフリーに何やら話しかけてから、持っていた球を自分の手元に蹴り上げ、捕ると同時にタッチラインの外へ蹴り出す。ノーサイド。 敗軍主将のアラン・ウィン・ジョーンズは、身長196センチ、体重118キロのロックでW杯4大会連続出場のタフガイだが、この時ばかりは意気消沈していた。大きな背中を丸め、声を潜める。 「ここは準決勝。(スクラムなどの)セットプレーなど、細部で勝敗が分かれる」 27日のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の準決勝。準々決勝で日本代表を破った南アフリカ代表が、今年の欧州王者であるウェールズ代表を19-16で下した。 この夜も、伝統的に強い南アフリカ代表のフォワード陣が骨をきしませた。 中でも殊勲はフランカーのピーターステフ・デュトイ。両軍最多となる19本のタックルを放ちながら、ミスはわずか2本とした。序盤から相手を掴み上げるチョークタックルあり、腰元へぶち当たるロータックルありと、身長200センチ、体重115キロという巨体を休めない。 16―9とリードしていた後半19分頃には、自陣ゴール前右で相手のラインアウトからの攻撃に挑む。突っ込んでくる相手フォワードへ刺さっては起き上がり、また刺さる。2フェーズ連続のタックルだ。ウェールズ代表が球を出そうとする接点へも、果敢に身体をぶつける。重労働に重労働を重ねた。 最後はラックに巻き込まれてペナルティを取られ直後のスクラムからの攻めなどで16―16と同点にされたが、そのスクラムは、味方フォワードのパワーとまとまりで押し返していた。何より絶体絶命のピンチを迎えてから失点するまでに約5分も踏んばってトライを許さなかった。