個性派の宿 おすすめ3選、長野・京都・草津…有名建築家の「作品」に泊まる
■自然と共生し成長を続ける、「完成しない」宿
夏は爽やかな風が吹き抜け、エアコンなしでも快適に過ごせるほど。冬は真っ白な雪景色に包まれて、しんと静かな時間に癒やされる。オープン当初、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた屋根の銅板は、季節が一巡するのを待たず、早くも落ち着いた色合いに変化。屋根に植えられた富士桜の木もすくすくと伸び、訪れるゲストの目を和ませている。 今年は敷地内に復活させた田んぼで米作りにもチャレンジする。また、別のエリアには今後植樹を行い、木陰にガーデンチェアを置いてゲストがくつろげる庭に育てていくという。ここは自然と共生しながら成長し続けていく、永遠に「未完成」の宿。訪れるたびに新たな出合いや発見があり、時期を変えながら何度も通いたくなる、そんな魅力的なスポットだ。
■安藤忠雄のミニマムな世界を京都で体験
京都・祇園の「THE SHINMONZEN」は安藤忠雄氏によるデザイン。町家の風流美とモダニズムが融合する館内の至るところに現代アートのコレクションを配した、全9室のスモールラグジュアリーホテルだ。 古美術の町としても知られる新門前通りに位置し、清らかな水が流れる祇園白川に面したロケーション。4階建ての新築の建物だが、正面からは2階建ての町家造りのレトロな建物のように見え、周囲の景観に美しくなじんでいる。
■安藤建築の魅力を凝縮したアプローチがお出迎え
エントランスの「S」のロゴが染め抜かれたのれんをくぐると、目の前にはすっと伸びるアプローチが。片側の壁面には無機質な打ちっ放しのコンクリート、もう片側には温かみのある木材がリズミカルに配され、まさに安藤建築が魅了する美を凝縮したスペースといえる。 アプローチの突き当たりに飾られているダミアン・ハーストの作品をはじめ、館内に展示されているアート作品はすべて、オーナーのパディ・マッキレン氏のプライベートコレクション。ロビーエリアのラウンジ「ライブラリー」には、ルイーズ・ブルジョワ、ゲルハルト・リヒターの絵画、マーク・ニューソンの日本刀、黒田泰蔵の作品などが並ぶ。 実はマッキレン氏は知る人ぞ知る国際的なホテル経営者で、世界中に数多くのホテルやワイナリーを所有している。そのうちのひとつ、南仏プロヴァンスのワイナリー「シャトー・ラ・コスト」には、ブドウ畑や森の中に著名なアーティストの作品を多数インストール。安藤氏はマッキレン氏の友人でもあり、ワイナリー内には安藤氏設計のアートセンターもある。 ここ「THE SHINMONZEN」は同ワイナリーに併設するホテル「ヴィラ・ラ・コスト」の姉妹ホテルとして誕生したと言えば、このホテルと安藤氏とアートの深い関係を感じていただけるだろうか。