個性派の宿 おすすめ3選、長野・京都・草津…有名建築家の「作品」に泊まる
■天然素材がかなえる美しさと居心地のよさ
客室はすべてスイートで、白川に面したバルコニー付き。9室ともデザインが異なり、「KINU(絹)」「WASHI(和紙)」「JIKI(磁器)」など素材の名前がつけられている。インテリアデザインを手がけたのはフランスのアーティスト、レミ・テシエ氏。ヒノキの風呂(9室中7室)、天然木の床、一枚岩の大理石をくりぬいたシンクなど、天然の素材が現代的なエレガンスを醸し出す。 2023年3月のグランドオープン時にはモダンフレンチの巨匠、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリステン氏が手がける京都初のレストランも誕生し、話題となった。今後はペストリーショップのオープンも予定されているというから、続報を楽しみに待ちたい。
■環境に溶け込む、隈研吾氏デザインの温泉宿
群馬・草津温泉のシンボルである「湯畑」の前に立ち並ぶ温泉旅館のなかでも、ひときわ目を引くのが、隈研吾氏が設計デザインを担当した「きむらや」。コンセプトは「湯畑の立体化」。湯畑に流れる温泉、湯畑を囲うように並ぶ浅間石、地面に埋め込まれた瓦など、湯畑を構成する要素を意匠のあらゆるところに用いている。 たとえば、ゆるやかなカーブを描く真っ黒な外壁には、湯畑に転がる浅間石をそのまま配置。ボルダリングを想起させるインパクトのあるルックスながら、少し離れたところから旅館を眺めてみると、湯畑のある風景に見事に調和している。「その土地の環境に溶け込む建築を目指す」という隈研吾氏の流儀を感じ取ることができるだろう。
■草津名物、湯畑の天然素材を内装にも
こちらは1日1組限定の宿で、客室は2階の1室のみ。温泉付きのツインベッドルームは、黒い天井と壁が印象的なモダンな雰囲気。立体感のある壁紙は2枚の和紙の間に浅間石のテラゾーや石を砕いてすき込んだもので、ここにもまた湯畑の素材が生かされている。 浴室をはじめとする水まわりの壁に配されているのは、湯畑の地面に埋め込まれている瓦材。立ちのぼる湯気をイメージしたという有機的な配置に遊び心を感じる。温泉は草津に6つある源泉のなかでも特に歴史が古く、かつて源頼朝が発見したという説もある「白旗源泉」を引湯。湧出量がそこまで多くなく、また自然の勾配を利用して引湯していることから、入浴できるのはここ「きむらや」を含む草津温泉内の6カ所のみ。そんな貴重な源泉をかけ流しで堪能できるのがうれしい。 1階のレストランは2024年3月にリニューアルしたばかり。湯畑を眺めながらモーニング、ランチ、ディナー、バータイムを楽しめるオールデイダイニング「ディブレ草津温泉」として生まれ変わった。スペイン、イタリアン、アメリカンの要素を融合したメニューのなかでも、群馬のブランド牛「上州牛」のグリルはぜひ味わってみたい。 文:志村香織(ライフスタイルエディター&ライター、カラーセラピスト)
志村香織
『mcシスター』『エル・ジャポン』などの編集部を経て独立。ウェルビーイング(心身の健康や幸福)をテーマに執筆や編集ディレクションを行う一方、オーラソーマやカードリーディングなどの個人セッションを提供するサロン「drop’dee」を主宰。色彩心理に関する執筆や講演も。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。