次世代パワー半導体用基板、300ミリに大口径化 信越化学
信越化学工業は3日、GaN(窒化ガリウム)専用の成長基板で300ミリメートル(12インチ)の大口径化を実現し、サンプル提供を開始したと発表した。 【関連写真】300ミリメートルQST基板とのサイズ比較 同社は、米国Qromis社(カリフォルニア州)が開発したGaN成長専用の複合材料基板である「QST基板」のライセンスを2019年に取得。これまで150ミリメートル(6インチ)、200ミリメートル(8インチ)のQST基板などの販売を行ってきた。一方、顧客からはさらなる大口径化のニーズが強く寄せられており、今回、それに応えた形だ。 GaNは、従来のシリコン生産ラインが使用可能であるため、大口径化による生産コスト低減が期待されている。半面、GaN成長に適した基板がないことから、大口径化による反りなどの課題で生産の歩留まりが悪く、そのメリットが生かされ切れていなかった。 サンプル提供を開始した300ミリメートルのQST基板は、シリコン基板上では不可能だった反りやクラックのない厚膜の300ミリメートルGaNエピタキシャル成長が可能となり、デバイスコストを大幅に削減可能となる。信越化学は今後、300ミリメートルQST基板の量産化にも取り組む。 QST基板はGaNと熱膨張係数が同等であるため、標準的なシリコン基板と同じ基板厚でエピタキシャル層の反りやクラックの抑制が可能。この特長を生かし、パワーデバイスや高周波デバイス、LED向けに、国内外の多数の顧客に開発評価されている状況だ。最近のデータセンター向け電源をはじめとするパワーデバイスへの関心の高まりに対し、実用化に向けたエンジニアリング面での開発フェーズに入っている。
電波新聞社 報道本部