岐路迎えた熊本県職員住宅 老朽化、道路事情の改善 熊本市の9棟、27年度までに全廃方針 天草市では集約進む
5市町に計27棟を構える熊本県の職員住宅が老朽化や環境の変化を背景に岐路を迎えている。県は熊本市内の9棟について「民間の賃貸住宅を探しやすくなった」として、2027年度までに全て廃止する方針を決めた。天草市では集約して単身世帯向けに建て替える動きも出ている。 民間の賃貸物件が少なく道路事情も悪かった1950~60年代。県職員住宅の整備は福利厚生の一環で始まった。 現在は熊本市の9棟のほか、天草市に11棟、阿蘇市と芦北町に各1棟、人吉市に5棟ある。賃料は月額6400~3万4200円で、建設費や維持管理費によって異なる。 27棟の総戸数は428戸で、11月1日時点で69%に当たる297戸に職員が入居している。2016年の熊本地震では被災者の住まいとしても活用され、入居率は一時、9割前後に達した。だが、老朽化も影響して再び低下している。 築50年が経過したのは14棟で半数を超えている。天草市本渡町の職員住宅が築59年と最も古い。県総務厚生課は「耐用年数に達した物件も多く、大規模改修や建て替えを検討する時期だ」と説明する。
熊本市内の9棟は「民間物件が多く、道路整備も進んでいる」として全廃する方針。入居者に随時、説明を続けており、退去への同意を求める。廃止後は「売却、民間貸与、県有地のままでの活用などが考えられる」という。 熊本市外の住宅は「一定の需要がある」とみて、基本的に残す。ただ、天草市では県の教職員や県警職員住宅の一部も老朽化しているため、県職員住宅と併せて〝集約〟を進める。 天草市には県関係で計20棟の職員住宅(県11、教職員4、県警5)があり、これを10棟程度まで減らす。老朽化した12棟(県9、教職員2、県警1)を集約しつつ、需要が大きい単身向け住宅を数棟、新築する。 新築する職員住宅に関しては25年度、資金調達、設計、施工、建設後の管理を民間に委ねる「PFI方式」で事業者を募る。県有地でPFIを活用する初のケースとなり、県財産経営課は「民間のノウハウを生かして効率的な活用につなげたい」としている。(川野千尋)