日本で「グローバルエリート」は育つか? 早慶上智の若者たち9人に聞いた
子に主体性を持たせることができるかどうかが第一関門
長谷川:もともと海外に興味がなくても、異なる文化の若者たちに触れることで意識が変わるということでしょうか。 松元:わたしも日本の私立中高一貫校ですが、とくに優秀ではなかったと思います。TOEFLibtの勉強を始めたのは高校になってからでした。弟も奨学金でオランダのマーストリヒト校に行っています。大学時代にパリ政治学院に行って視野が開けて、いまは利他的な資本移動に関わる仕事にすごく興味があって、金融を勉強中でビジネススクールにも行っています。フィランソロピーを加速させる一翼を担う人材になりたいです。 川崎:僕はこれからイギリスのカーボンクレジット関連スタートアップで働きますが、やはり日本の未来に役立つべく、カーボンクレジットや環境問題を解決したいと考えています。 坂口:日本は小さい国ながら、アメリカや中国と付き合いがあり、東南アジアにも様々な発展支援を行ってきました。国連総会で日本の発言や意見が途上国に重視されることや、日本が国際法の平等な解釈と応用を推進することはよく耳にします。そんなふうに、日本が今まで培ってきた信頼を今後も大切にするために、日本人、そして日本の政治や経済が世界に残す足跡は真摯で誠実なものであってほしいと思います。 ここまで話を聞いて思うことは、多様性が重視されるいま、グローバルに活躍したいと志せば充実した奨学金制度を活用することができる。つまり富裕層の家庭でなくとも機会はあるが、ただ親が子に主体性を持たせることができるかどうか、が第一関門となるだろう。 受験戦争に巻き込まれる都会の子どもたちは、常に気力疲れのようなものを抱えている。主体性を持つという思考力や体力を、大学受験まで温存できるかどうかが鍵であろう。 筆者自身も東京で生まれ、塾へ行く新宿駅の雑踏のなかで感じた「個の虚しさ」のようなものを忘れることはできない。東京は思春期の若者を部屋で心静かに勉強させるような都市ではなく、金を消費させることを至上目的とする商業都市である。優れた学者に都会育ちは少ないと聞くが、次回はさまざまな大学受験のかたちについて触れていきたい。 その2に続く
長谷川悠里