メルカドリブレ、アマゾン、エリクソン…ブラジルのEC市場はどう急成長し、ネットは貧民街をいかに変えたか?
かつては犯罪組織が実効支配して幅をきかせ、地元政府もおいそれと手出しができない状態だった。それが10年11月に軍警察が大規模に出動、装甲車も用いて麻薬組織の掃討作戦を実施したことで、「外の社会に扉が開いた」(ティブルシオ)。それでも当時はまだ未舗装の道も目立ち、一部の場所ではゴミが散らかっていた。 そのビラクルゼイロに、生後3カ月から86歳まで、およそ8000人が利用する「学校」ができた。リオデジャネイロ州と非政府組織(NGO)のアチトゥーデ・ソシアルが共同で運営にかかわる。様々な分野の知識やスポーツ、音楽、ダンスなどを学べる。大人は時間がある時に、学生は放課後にやってくる。教師51人、年間予算は190万レアルの組織だ。 その組織が12年6月に提携したのがスウェーデンの通信機器大手、エリクソンだった。企業の社会的責任(CSR)の一環として資金を投入して、コンピューターを入れ、公衆無線LAN(構内情報通信網)のWi-Fi を整備した。同年10月からはネットの利用方法を教える講座を展開した。授業では情報を検索する方法、フェイスブックなどソーシャルメディアの利用方法を学べる。 NGO代表のサンドラ・ビダルはエリクソンとの提携を受け入れた理由について「通信を通じたコミュニケーションは人々の生活を豊かにする。社会的な孤立を防ぐことにもつながる」と話した。従来は麻薬取引人が電話線を切断するなどしており「地区が社会から閉ざされていた」という。「住民が携帯電話を使い、ネットを操ることで教育や仕事の可能性を高められるようにしたい」と展望する。 エリクソンは通信機器メーカーのため直接的に消費者との接点は持たない。このため通信大手などと組み共同展開する事例も多い。ビラクルゼイロではスペインの通信大手テレフォニカと協力して成果を出そうとしていた。 ただ、24年7月時点でインターネット上でこのビラクルゼイロの組織を調べると、SNSの更新は止まっており、関係がありそうな複数の電話番号に連絡してみたが、コンタクトすることはできなかった。
宮本 英威