インドで繰り返される投信調査-不安抱く投資家は撤退も
(ブルームバーグ): クオント・ミューチュアル・ファンドはインドの株式市場に旋風を巻き起こしてきた。コンピューターモデルを駆使し560%のリターンを上げ、資産を約400倍に増やた。その華々しい活躍が、インド証券当局の新たな調査によって脅かされている。
インド証券取引委員会(SEBI)はクオント・ミューチュアル従業員によるフロントランニング取引疑惑を調べている。事情に詳しい関係者が先に明らかにしていた。フロントランニングとは、株価を動かすような取引が間近に迫っているという内部情報に基づき株取引を行うことで、多くの他市場と同様、インドでも違法行為だ。
ムンバイを本拠とし約110億ドル(約1兆7500億円)を運用する同社は、当局から問い合わせを受け、全面的に協力していると表明した。
インドの投資信託投資家にとって、今回の調査は、かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだった運用会社での償還の波を巻き起こした最近の事例を連想させる。
SEBIは2022年、アクシス・ミューチュアル・ファンドの従業員による違法取引を突き止めた。HDFCアセット・マネジメントも同じような調査対象となった。
インド証券当局、急成長の投信調査-フロントランニング疑惑巡り
投資プラットフォーム、プライムインベスター.inの共同創業者ビディア・バラ氏は、「こうしたニュースが流れると、投資家は待つことも考えることもなく、換金する」と指摘。アクシス・ミューチュアルは償還圧力が大きく「過去の栄光を取り戻すのにまだ苦労している」と語った。
プライムインベスター.inはクオント・ミューチュアルのファンドから撤退することを勧めている。
市場の行き過ぎ
世界金融危機ピーク時の2008年にインドで増えつつあった富裕層の資金運用のためクオント・グループを始めたサンディープ・タンドン氏にとって、SEBIの調査は痛手となり得る。
タンドン氏は好機を捉えた。世界の大半がその後の不況に見舞われる中、インド経済は政府の景気刺激策に後押しされ、急速に回復したためだ。