袖を通したような「一体感」 ロータス・エリート(2) 悪評ばかり聞こえた4シーターの重要モデル
2.2Lの太いトルク 袖を通したような一体感
ブラックのエリートは、タイプ83のシリーズ2.2。ロジャー・マクルフ氏がオーナーで、タルガトップを備えるかなり珍しいリビエラ仕様になる。20代の頃に初代エランを運転して以来、ロータス・マニアの道を歩んできたという。 ランボルギーニ・エスパーダ風のスタイリングが、彼の好きな特徴。派手なイエロー・レザーのインテリアは、好みで後に張り替えられたものだ。「誰かが酔っ払って間違って乗り込んでも、すぐに違うと気づくでしょうね」。とマクルフが笑う。 デロルト・キャブレターが載った2.2Lエンジンはトルクが太く、明らかに余裕がある。高速走行時も、4速へ落とすことなく、充分な速度上昇を誘える。ダッシュボードのデザインは、前期型より洗練されているのと同時に、個性が薄れたともいえる。 製造品質は、僅かに向上した印象が漂う。それでも小さなペダル3枚の間隔と、シフトレバーの感触、エリートへ袖を通したような絶妙の一体感は変わらない。 ダークブルーのエリートは、1974年式。ポール・ブリットン氏がオーナーで、ロータスを得意とするガレージ、ロータスビッツ社のアップデートを受けている。 ボディカラーは、オリジナルと同じ色味で再塗装。シャシーは後のロータス・エクセル用で、亜鉛メッキ済み。サスペンションのトップリンクやロワー・ウイッシュボーンもエクセル用。ドライブシャフトは、トヨタ・スープラのアイテムが流用されている。 ボディは、サイドモールが省かれている。それ以外は、オリジナルが保たれた。
その後のロータスにとって重要なモデル
ボンネットを開くと、2.6Lへ排気量が増やされた、インジェクションの907エンジンが姿を表す。ビレット・クランクシャフトへの置換やポート研磨のほか、タルボ・サンビーム・ロータスへ通じるチューニングで、最高出力は273psまで向上している。 トランスミッションとリミテッドスリップ・デフも、トヨタからの流用。果たして、現代のどんな要求にも対応するであろう、高速エリートへ仕上がっている。 トルクは大幅に増強され、かなり早い段階でシャシーの安定性の限界に達する。とはいえ、その前後の推移は穏やか。1970年代のスタイリングで、現代的なメカニズムが包まれているが、フランケンシュタイン的な化け物感はない。 古き良きロータスの4シーター・コンセプトが現代へ受け継がれていたら、こんなクルマが作られただろうな、と思わせる。非常にまとまりが良い。 2代目エリートは、チャップマンが手掛けたモデルの中で、最も巧妙な設計が施された1台だと筆者は思う。コンパクトなボディに、大人4名が乗れるパッケージングを実現し、優れた動力性能と燃費を叶えていた。半世紀前の技術的な偉業といえる。 衝突安全性に対応し、数年先の排出ガス規制にも準拠できていた。一時は悪評ばかり聞こえたタイプ75は、ロータスにとって重要なモデルでもあった。過去へとらわれず、改めて存在を評価すべきモデルといえる。忘却されるのは、あまりに惜しい。 協力:ロータスビッツ社、マイク・テイラー氏
ロータス・エリート(1974~1982年/英国仕様)のスペック
英国価格:1万6433ポンド(新車時)/2万ポンド(約390万円/現在)以下 生産数:2398台 全長:4458mm 全幅:1803mm 全高:1207mm 最高速度:212km/h 0-97km/h加速:7.5秒 燃費:12.7km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:1158kg パワートレイン:直列4気筒1969・2174cc 自然吸気DOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:157-162ps/6500rpm 最大トルク:19.3-22.0kg-m/5000rpm ギアボックス:5速マニュアル/3速オートマティック(後輪駆動)
マーティン・バックリー(執筆) リュク・レーシー(撮影) 中嶋健治(翻訳)