総裁選でも新政権でも議論されない“日本の急所” ダウンサイジングしなければ破綻する
日本の経済力は下から数えたほうが早い
8月に4~6月期のGDP速報値が発表された際、名目GDPが年換算で約608兆円となり、はじめて600兆円の大台を超えたと報じられた。そういわれると、日本の成長もまんざらではないように聞こえるかもしれないが、誤解である。 日本のGDPは拡大しているとはいえ、1990年からの33年で3割しか増えなかった。結果として昨年、ドル換算でドイツに抜かれ、世界第4位に転落した。68年に当時の西ドイツを抜き、アメリカに次いで世界第2位になって以来、2009年まで2位を維持したが、10年に中国に抜かれた。そして今度は、日本が「失われた30年」に突入した1990年半ばには、GDPが日本の47%にすぎなかったドイツに追いつかれ、抜かれてしまった。 しかも、日本は世界の国々のなかで比較的人口が多いので、GDPが大きくなる傾向にある。豊かさを測るより正確な指標は、これを人口で割った1人当たりGDPだが、こちらはOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中の21位にすぎない。あるいは、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界競争力ランキング2024」では、67の国と地域のなかで、日本は下から数えたほうが早い38位である。 日本が挽回することは可能なのだろうか。仮に岸田文雄内閣が唱え、石破内閣も目指すと思われる「成長と賃金の好循環」が実現したとして、近未来まで見渡したときに、見過ごせない問題が横たわっている。止められないどころか、加速度がついている少子高齢化である。 2023年の出生数は、前年より前年より4万3482人少ない72万7277人で、1979年の調査開始以来、最少だった。一方、死亡数は157万5936人と過去最多で、両者の差である自然増減は85万8659人減となり、はじめて80万人を超えた。厚生労働省の第3回社会保障審議会年金部会が23年に発表した「将来推計人口」は、70年には日本の総人口は8700万人にまで減り、高齢化率は38.7%に達するとしている。しかも、統計が発表されるたびに、少子化や人口減は予想を大幅に上回るペースで進んでいるから、現実には、総人口はさらに減る可能性が高い。 この状況のなかで積極財政を続けたらどうなるか。将来、勤労世代の人口が激減することが目に見えている以上、私たちの子や孫は膨張した債務残高の海に飲まれて、身動きがとれなくなってしまう。