日銀、利上げ見送り論強まる 直前まで情勢見極め=12月会合で関係筋
Takahiko Wada [東京 12日 ロイター] - 日銀内で追加利上げを急ぐ必要はないとの認識が広がっている。関係筋によると、18―19日の金融政策決定会合で足元の経済・物価情勢がオントラックであることを確認しつつ、海外経済や賃上げ動向をもう少し見極めた上で利上げしても問題ないとの声がある。一方、12月会合での利上げを排除すべきでないとの声もあり、日銀短観や米連邦公開市場委員会(FOMC)、市場動向を見ながら最終的に判断するとみられる。 日銀は経済・物価が見通しに沿って推移すれば政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくと繰り返し表明してきた。ここまでの経済・物価は、個人消費なども含めて見通しに沿って推移しているとの見方が多く、日銀内では12月会合での利上げを支持する向きもある。 一方で、経済や物価を取り巻く不確実性は引き続き大きい。 来年の春闘でどの程度の賃上げ率が実現するのか現時点で見通せておらず、賃上げ動向を見極めたいとの声がある。 米国では強い経済指標が続いているが、トランプ新政権はまだ発足しておらず、新政権の経済政策がどうなるかは不透明だ。日銀では、トランプ氏が打ち出す政策次第で米国経済が上下に振れるリスクがあり、もう少し情報を待つ必要があるとの声が出ている。 利上げを決めた7月の決定会合とは市場環境が異なっているとの声も多い。7月の決定会合にかけては、円安の加速で輸入物価が上昇幅を拡大し、物価の上振れリスクが利上げ決定の1つの要因になった。しかし、8月の市場の急変動で円安修正が進み、9月にFRBが利下げモードに転換したことで、足元で急速な円安にはなりづらくなっているとの見方がある。日銀では輸入物価上昇を通じた物価上振れリスクへの警戒感が後退している。 日銀では、実質金利が非常に低い割に経済も物価も浮揚感に乏しく、中立金利は1%に届かないのではないかとの声も出始めている。利上げを急ぐ必要はなく、タイミングは慎重に選ぶべきだとの声が強まっている。 12月に利上げすれば必要以上にタカ派的な姿勢と市場が受け取るリスクへの警戒感もある。 政府サイドからは、景気に配慮した金融政策運営を求める声が出ている。ある政府関係者は個人的な考えとしたうえで「景気がもう少し回復するまで金利は上げないでもらいたい」と話す。一方、別の政府関係者は「今の経済情勢やマーケットの状況をみて日銀が判断すること」と述べる。