「恋愛と結婚は混ぜるなキケン」。マッチングアプリ恋愛で誰でも「勝ち抜け」できるわけでではない理由【牛窪恵さん】
マッチングアプリ恋愛の落とし穴、自由恋愛の問題点
リアルのお見合いや紹介という風習が衰退する半面、時代はデジタル化社会となり、マッチングアプリでも恋愛や婚活が可能になりました。こうなると、表面的な恋愛力や経済力によってモテる、モテないが左右され、誠実でも自信のない人々は取り残されやすくなります。 ですが、『恋愛結婚の終焉』の著者である牛窪恵さんは、「そもそも恋愛と結婚は混ぜるなキケンなんです」と警鐘を鳴らします。長期的な結婚生活にとっては、恋愛のような刹那的な快楽や情熱、高揚感ではなく、安心感や信頼、コミットメントなどが重要で、脳科学的にも恋愛力は、むしろ邪魔になるとのこと。恋愛結婚に代わる新たな結婚の形について考えるこの企画。第2回は、「アプリ恋愛の落とし穴、自由恋愛の問題点」についてお話を伺います。
牛窪恵(うしくぼめぐみ)さん 世代・トレンド評論家。立教大学大学院(MBA)客員教授。経営管理学修士。大手出版社に勤務したのち、2001年4月にマーケティング会社インフィニティを設立、同社代表取締役。著書を通じて世に広めた「おひとりさま」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は新語・流行語大賞に最終ノミネートされる。新著『恋愛結婚の終焉』のほか、近著は『若者たちのニューノーマル-Z世代、コロナ禍を生きる』(日経プレミアムシリーズ)、『なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?』(共著/光文社新書)など。テレビのコメンテーターとしても活躍中。
「バツイチ子アリ」に切り替える女性、「20代」にこだわる男性
――『恋愛結婚の終焉』の中では、男性に「年収」「家事・育児能力」に加えて「見た目」まで求める、いまの女性の「上昇婚志向」についても触れられています。SNSを見ていると、「女性たちには(男性に求める条件を)妥協してほしい」という男性の意見もよく目にします。一方で、男性も女性の若さにこだわりますよね。“求めすぎ”なのはお互い様なような気もします。 牛窪恵さん(以下、牛窪):男性が「条件を妥協してくれないと困る」と言うのなら、本来は自分がその分何ができるかを提示しないと選ばれにくいですよね。年収は250万円だけれど、家事の大半は任せてくださいとか、大学では育児について専門的に学んだので子育てに活かせますとか。でも多くの男性は、家事・育児の能力や協力姿勢が「売り」になることに気づいていません。だからこそ、「どうせ女性は妥協しないんでしょ」と諦めモードになったり、つい逆ギレしたりしてしまいます。 「若さを求める」で言うと、婚活業界の方々が決まって口にするのが、「40歳を過ぎた男性が、結婚相手は20代女性じゃないと嫌だと言って譲らない」という現実です。女性の年齢(若さ)が妊娠確率に影響することは広く知られていますが、実は拙著に書いた通り、男性も年齢を重ねると子作りにいろいろと支障をきたすことが、最新の研究で明らかになってきています。つまり、「子作りは30代までに済ませた方がベター」なのは、男性についても同じ。ですが、その現実を男性はあまり知らないし、認めたがらないんです。 ――女性は否応なく、タイムリミットを突きつけられますからね。 牛窪:年齢面では女性たちの方が切実なので、ある時期にいい意味で開き直ったり、柔軟に考え方を変えたりする女性も少なくありません。例えば、子どもは欲しいし育てたいけれど、自分は40歳を過ぎている。だったら、バツイチ、バツ2の子アリ男性と結婚すればいいのでは? と気づいて、そうした条件での婚活に切り替える女性たちもいます。また、養子縁組に関する情報を集め、その可能性を探る人たちもいる。価値観をシフトチェンジして、角度を変えて物事を見ることができるんですよね。 男性も、50代になると仕事の先行きが見えたり、体力が衰えたりしてきますし、子どもを授かっても子が成人を迎える頃には70歳を過ぎるわけです。だから、別に子どもにはこだわらない、若い子と話を合わせるのも大変だから年齢が近い女性がいい――そんなふうに変化していく男性も、ごく一部ながら存在します。半面、10年ほど前から、芸能人や著名人を中心に「年の差婚」がブームなので、50歳前後でも「稼ぎがあれば、若い女性と結婚できるだろう」と信じて疑わない男性もいるんですよね。