岡山天音「自分を認めないと、他者も認められない」過去一の覚悟で挑んだ“笑いに取り憑かれた男”
陰鬱とした人間も晴れやかな好青年も、弱々しい被害者も狂気を纏った犯人も見事なまでに演じ分けることができ、ドラマや映画に引っぱりだこの俳優・岡山天音さん。主演映画『笑いのカイブツ』は、笑いに人生を捧げた“伝説のハガキ職人”の半生を描いた作品。ネタ作りに没頭する男の狂気や苦悩を圧倒的な演技力で体現した。 【写真で見る】主演映画が本日公開! 岡山天音の写真を見る 10代半ばで俳優デビューした岡山さんも、これまで何度も理想と現実のギャップに悩み、もがきながら実績を積み上げてきた存在。「主人公の心情と共鳴した部分が多かった」という撮影時のエピソードを中心に、仕事との向き合い方やお気に入りのリフレッシュ術を語ってもらった。2記事にわたる本取材の1本目を公開。
自分の中で戦争が起こりながら、人間としての営みを継続させている人はなかなかいない
――『笑いのカイブツ』は「伝説のハガキ職人」として有名なツチヤタカユキさんの同名私小説を映画化した作品です。笑いにとり憑かれた男の激烈な半生を描いた人間ドラマですが、主演のオファーが届いた際の感想を教えてください。 岡山 もともと僕はラジオが好きだったので、ツチヤさんの存在は知っていたんです。でも“おもしろい人”というポップなイメージしか持っていなかったので、原作小説を読ませていただいたら内面にカオスが渦巻いていて……なんだか武者震いしましたね。全力で挑みたくなる素晴らしい役を任せていただいた喜びと、これから大変な時間を過ごすことになる緊張感を味わいました。 ――これまで岡山さんは数々の作品で多様な役柄を体現されてきましたが、それでもツチヤタカユキというキャラクターは特殊でしたか? 岡山 そうですね。ここまで自分の中で戦争が起こりながら、人間としての営みを継続させている人って、フィクションのキャラクターでもなかなかいないので。キャリアの中でも強い覚悟が必要な役柄でした。ただ、劇中でツチヤが直面するカオスに関しては、丸ごと理解することができましたね。行動が極端ではあるものの、ツチヤが抱えているカオスって普遍的なものだと思うんですよ。だから僕も原作小説を読んで共鳴できましたし、今回の映画を観ていただけば、誰しも思うところはあるんじゃないかなと。