岡山天音「自分を認めないと、他者も認められない」過去一の覚悟で挑んだ“笑いに取り憑かれた男”
僕は本質的には感情の起伏が激しいタイプ
――もともと知っていた人物を演じることにプレッシャーはありましたか? 岡山 全部を原作通りに再現するわけでないので、最初はあまり気負っていなかったんですよ。主人公と原作者の名前が一緒ですし、ご本人の密着映像も見せてもらったし、実在する方だからこそ『大事に演じなければならない』というプレッシャーは芽生えました。 ――先ほど「自分の中で戦争が起きている」と独特の表現をされましたが、岡山さんご自身にもそんな時期はありましたか? 岡山 ありますね。僕は16歳の頃に事務所に入ったのですが、その時期って自分の中で戦いがちじゃないですか。まだまだ自分の意思でコントロールできないことばかりの状況で、プロの先輩俳優の皆さんやスタッフさんに囲まれていたので、数えきれないほど理想と現実のギャップに打ちのめされていたと思います。僕は穏やかな人間に見られることが多いのですが、母親も認めるくらい本質的には感情の起伏が激しいタイプなんです。だから今でも自分の中で戦争が続いている感覚はありますが、折り合いの付け方がわかってきた部分もあります。
自分を認められないからこそ、他者を認めることもできないのかも
――劇中でツチヤは周囲に狂気を感じさせるほどお笑いのネタ作りに没頭しています。彼は何と戦っていたんだと思いますか? 岡山 一言でまとめるのは難しいのですが、やっぱり自分のことを許せないんじゃないですかね。誰よりもお笑いに時間を割いて、ネタ作りの物量にもこだわって、自分を認められないからこそ努力の量で不安を埋めようとしているような気がしました。自分を認められないからこそ、他者を認めることもできなくて、人間関係でも摩擦が起きてしまうのかなと。そして、当たり前ですがツチヤはお笑いがものすごく好きなんだと思います。あらゆるエンタメがあるなかで、お笑いに強烈なシンパシーを感じてしまったからこそ、まるで命を燃やすようにネタ作りに励んでいるんですよね。 ――岡山さんもお笑いのパワーに救われた経験はありますか? 岡山 すごく印象に残っている記憶があります。仕事を始めたばかりの頃は、ドラマや映画のオーディションに落ちまくる日々が続いたんです。コテンパンになって家に帰ってきて、電気をつける気力もないんだけど、なんとなくテレビをつけたらお笑い番組が流れていて。それをぼんやりと眺めていたら、心がメタメタな状態だったはずなのに、なんだか笑っちゃったんですよね。瞬発的に人の気持ちを明るくできるお笑いのすごさを実感しました。