【NBA】2年目に飛躍するグレイディ・ディック、『オフボールムーブの秀逸さ』を生かしラプターズの貴重な戦力に
ボールを保持しなくてもチームに貢献できる選手
2023年のドラフトで指名された選手の中で、1位指名のビクター・ウェンバニャマが期待通りの大活躍、2位指名のブランドン・ミラーも平均20得点を超える活躍を見せています。そして、この2人に次ぐ18.4得点を奪っているのが13位でラプターズに指名されたグレイディ・ディックです。ルーキーシーズンの8.5得点から大きくスタッツを伸ばし、再建中のラプターズのコアメンバーとして台頭してきました。 今シーズンのラプターズは開幕早々にスコッティ・バーンズやイマニエル・クイックリーがケガで離脱したことで、ガードポジションでスターターの座が空きました。ここでチャンスをつかんだディックはディフェンスを引き剥がすオフボールムーブと、テンポの良いボール回しで主力の座をしっかりとつかみ取ったのです。 バーンズやクイックリー、RJ・バレットを中心にしたラプターズのオフェンスはドライブアタックを中心に組み立てられており、得点を取る仕事はオンボールで強みを発揮する選手が担っていました。しかし、ディックの特徴はボールを持っていない時でもディフェンダーと駆け引きし、自分がオープンになることもチームメートのために囮になることもできる点にあります。この特徴がハンドラータイプが多いチームの中で見事にフィットしています。 1試合でディックがボールを保持している時間はわずか1.4分で、これは平均18得点以上取っている選手の中で最も短く、1回のボールタッチあたり1.93秒も2番目に短い数字です。パスを受け取る前に状況判断ができており、自分でシュートを打つべきか、エクストラパスで展開すべきか、あるいはディフェンスの逆を取ってドライブアタックを仕掛けるべきか、時間をかけずに次のプレーへ移行するため、チームオフェンスの潤滑油として機能しています。 シュート能力が高くフリースロー成功率が90%を超えているものの、オフボールで動き回ってからのシュートには課題があり、まだ信頼できるシューターというほどのフィールドゴール成功率は残せていません(フィールドゴール成功率は41.9%)。 しかし、ディックのオンコート時のラプターズのオフェンスレーティングは113.6ですが、彼が不在だと106.1まで低下しており、シュートが決まらなくてもチームに貢献できているからこそ、スターターの一角に定着したと言えます。 判断能力の高いディックはスター選手と同時に起用しやすく、チームに欠かせない戦力になってきました。まだまだ2年目で伸びしろも十分にあり、それは同時にラプターズの伸びしろでもあります。