『虎に翼』寅子は“間違ったこと”はしていない? 「トラちゃんは何にも見えてない」の重み
アメリカでの裁判所視察団に参加した寅子(伊藤沙莉)が帰国した。アメリカの裁判所の状況を知った寅子たちは、日本との違いに気づき、また日本の良さも再確認することになる。これから日本の裁判所を変えていこうと意気込んだ矢先、寅子のもとにある伝達が届く。 【写真】寅子(伊藤沙莉)に不満を爆発させる花江(森田望智) その一方で浮き彫りになったのが猪爪家の家庭事情。『虎に翼』(NHK総合)第72話では、寅子が見過ごしていた家庭の問題が浮き彫りになる。 多岐川(滝藤賢一)、山本長官(矢島健一)と共にラジオ番組に出演した寅子。山本長官からは「家庭裁判所の母」と呼ばれ、まんざらでもない寅子だったが、山本長官の「家庭裁判所は女性裁判官にふさわしい場所と言えるでしょう」という発言に対し、得意の「はて?」が飛び出す。寅子は「家庭裁判所の裁判官の適正は個々の特性に決められるべきで、男女は関係ないのでしょうか?」と反論し、家庭裁判所が女の場所という思考が誤った偏見を助長することをやんわりと告げる。ピンと張り詰める空気感の中、山本長官は「さすが佐田さん、素晴らしい意見だ」と答えた。 後日、不貞行為を理由に夫から離婚の訴えを起こされた瞳(美山加恋)の調停を担当することになった寅子。寅子を見るやいなや「後で握手してくれる」とご機嫌に振る舞っていた瞳だったが、寅子が自分の味方ではないことを知ると、瞳は「あなた、女の味方じゃないの?」と激昂する。 女性であるという理由だけで、瞳は勝手に自分の味方になってくれると思い込んでいた。寅子が「相手の気持ちを考えてみては?」と話すと、瞳は「ちょっと有名だからって何様よ」と言って、部屋から飛び出してしまう。この時点では寅子は何ら間違ったことはしていないように思うが、もっと瞳に寄り添うことが必要だったのかもしれない。
花江(森田望智)「トラちゃんが見てるのはね、本当の優未じゃないの」
事務所へと戻った寅子だったが、何やら多岐川の様子がおかしい。「いいから着いてこい」と多岐川に言われるがままに向かった先は最高裁判所。桂場(松山ケンイチ)を見かけると、多岐川は怒りを爆発させる。その怒りの理由は寅子の新潟地家裁三条支部への異動だった。最高裁判所に来るまで何も知らされていなかった寅子は状況に困惑するばかりで、いまいち状況が掴めない。多岐川は寅子がラジオ番組で楯突いたことが理由なのかと山本長官に迫るが、異動を決めたのは人事局長である桂場だった。多岐川にとって寅子は優秀な部下でもあると同時に、家庭局も家裁も問題山積みの中で寅子がいなくなるのは大きな痛手だ。 自宅へと帰った寅子は直明(三山凌輝)と花江(森田望智)に、新潟地家裁三条支部へ異動することを告げる。寅子の告白に驚く直明に対して、花江は「お仕事なら仕方がないわよ」と毅然とした態度を貫く。寅子は「新潟には“私たち”だけで行こうと思うの」と話すと、直明は「それには賛成できない」と反論する。仕事で手一杯の寅子と2人で暮らすとなると、優未(竹澤咲子)は一人でいる時間が多くなってしまうことは確実だ。花江が「トラちゃんは何にも見えてない」と言うように、優未が寅子に甘えたくても必死に我慢していい子のフリをしていた。まずは寅子の意識が変わらなければいけない。 「トラちゃんが見てるのはね、本当の優未じゃないの」 仕事ばかりで娘に目を向けられていなかった寅子。花江の発言を機に、寅子は自分自身の過ちに気づくことができるのか。もちろん、仕事に精を出すのも大切だが、それ以前に家族との時間を大事にしてほしいと切に願う。
川崎龍也