最高の蜂蜜とレモンで作るカクテル、シンプルにおいしさ追求 ザ・リッツ・カールトン東京
■レモンのエキス 真空パックで抽出
カクテルの作り方には独特のプロセスがあります。大量の瀬戸内レモンの皮をむき、白い筋などを取り除いてジンにつけ込み、真空パックするのです。このまま1週間ほど寝かせ、レモンのエキスをじっくりと抽出します。 「最初はそれぞれの材料を合わせてシェークして作っていたんですが、なんか味が抜けてしまった感じがして。おかしいなあ、と試作していると、後輩から『シェークし過ぎるからじゃないですか』と言われたんです。そこで、真空パックを試したら、おいしさがバーンと伝わってきました。正解でしたね」 こうして完成したレモンジンと蜂蜜を3対1の割合で配合し、再び真空パックしてなじませます。「こうすると、蜂蜜のうまみが凝縮した沈殿物などが、液体の中で均質になるのです」 ただ、これでも「何かが足りない」と思ったそうです。やがて和田さんの飽くなき探究心が見いだした答えが「緑の香り」。そう、抹茶を使うことを考えついたのです。ただ、カクテルに入れるには味が強すぎます。思いついたのが、グラスの周りにふりかけ、全面を覆ってしまうというアイデアでした。 使うなら、飲み終わるまで長く香りが楽しめる抹茶がいい。そうして見つけたのが、京都宇治にある堀井七茗園(ほりいしちめいえん)の「奥の山」です。合わせてジンも堀井七茗園とコラボしている、京都のクラフトジン「季のTEA」を選びました。 ミュージシャンとバーテンダーに共通項はありますか? との問いに、和田さんは「たくさんあります」と即答しました。「一生懸命やればやるほど、いい味が出てくるところとか。例えばカクテルの香りと味わいのバランスの調え方なんか、ちょっと高音を足そうかな、と思って音響機材をいじっている感覚と同じですね。シェーカーを振る時だって、あの曲のリズムだな、なんていう感覚が重なります」 各地で出合った最高の食材で、日本のカクテルの可能性を広げてみたい――。守りに入らず攻め続ける和田さんの姿勢は、ロックそのものでした。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。