【衝撃データ】日本人男性に「信仰心はない」と答える人が激増中…「私は無宗教です」と主張する人たちの「根本的なカン違い」
「無宗教」という宗教
占い、予言に関するベストセラーも数多い。元お笑い芸人で占い師のゲッターズ飯田氏による「五星三心占い」シリーズは、昨年に累計1000万部を超えた。また、漫画家のたつき諒氏が1999年に刊行した『私が見た未来』は、「東日本大震災を予言したマンガ」として2021年に復刊、100万部に迫るベストセラーとなっている。 いったい、その深層で何が起きているのか。 「世の中の個人主義化、自己責任化が進むのと並行して、たしかに旧来の宗教は衰退しています。しかし、何かを信奉したい、大きな物語の中に身を置きたい、という人間の欲望はなくならない。それが様々な分野で『信仰の自覚がない宗教』『宗教未満の宗教』、いわば『宗教っぽいもの』を生み、宗教の代わりになっていると考えられます」 こう分析するのは、評論家で『人生は心の持ち方で変えられる?』などの著書がある真鍋厚氏だ。 「自分は宗教なんて信じない」と言いながら、本当は宗教的なものが大好き。その国民性は、今に始まったものではない。 「昭和に活躍した評論家の山本七平は、かつてこう書いています。 大学で宗教の講義をすると、『自分は宗教を信じないし、必要としない。ただ、心の弱い人が宗教を頼るのは理解できる』とアンケートに書く学生が沢山いる。 しかし、全く同じことを幕末に吉田松陰も言っていた。『自分は無宗教だ』という思い込みこそ日本人の宗教だ、と」
宗教化する会社たち
では、「無宗教」を自認する日本人が、知らず知らずのうちに取り込んでいる「宗教っぽいもの」には、占いやスピリチュアルのほかに、どんなものがあるのだろうか。 経営学者で、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は「実は企業のありかたが、近年では徐々に『宗教的』になっている」と見ている。 「かつて、日本の企業はビジョンや目的を大事にしていませんでした。経済は右肩上がり、社員は優秀で、終身雇用も成り立っていた。とにかく、がむしゃらに働けば何とかなったわけです。 しかし経済が衰退すると、頑張っても結果が保証されず、雇用も不安定になったので、『納得感』を提供しないと社員・従業員は動いてくれない。 そこで、経営者は『世の中をよくする』とか『ファン=信者を増やす』といった抽象的で大きな目標を掲げるようになった。昨今の実業界では、経営と宗教がかなり接近していると言えます」 実例に、創業家の豊田章男氏が社長に就任して以降のトヨタが挙げられる。「家元」を自称する豊田氏が2009年に社長になると、同社は強力なトップダウン体制のもと、「日本を元気にする」といった壮大なスローガンを掲げるようになった。 入山氏は、トヨタを「ローマ教皇を頂点としたカトリック教会の組織に似ている」と分析する。 さらに、組織の変化と並行して、日本人ひとりひとりの生き方にも「宗教っぽいもの」が浸透した。「自己啓発」の再流行だ。その詳細を後編記事【ひろゆき氏の思考法は「江戸時代に大流行した学問」にそっくりだった…!? 不安な若者の心をとらえる「頑張らない思想」の知られざるルーツ】で見てゆこう。 「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より
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