3バック導入で出番激減も闘志たやさぬ菅原由勢「僕たちは日本代表にただ来たわけではない」
昨年9月のドイツ撃破など第2次森保ジャパンの躍進を牽引してきた右SBが、“攻撃的3バック”の導入で大きく序列を落としている。 【写真】「スタイル抜群」「目のやり場に困る」“勝利の女神”のアウェー遠征に反響 日本代表DF菅原由勢(サウサンプトン)は今年6月、3-4-2-1の新システム初陣となった北中米W杯アジア2次予選・ミャンマー戦(◯5-0)に右ウイングバックで先発出場したが、攻撃を活性化できないまま後半17分に途中交代。すると続くシリア戦(◯5-0)、今月5日の最終予選初戦・中国戦(◯7-0)はMF堂安律(フライブルク)が先発に抜擢され、菅原はベンチに座ったまま試合を終えた。 今回の活動から代表復帰を果たしたMF伊東純也も中国戦は右ウイングバックで途中出場しており、ポジション争いはさらに激化。また左でもMF三笘薫やMF中村敬斗がウイングバックのポジション争いを繰り広げるなど、“攻撃的3バック”においてはウインガータイプの重用が顕著となっており、本職サイドバックの菅原は苦しい立場に置かれている格好だ。 第2次森保ジャパン発足後はチーム最多の出場試合数を誇っていた24歳に訪れた窮地。もっとも菅原はそうしたシステム変更のあおりも食らった状況でさえ、自身の成長の糧にしていく姿勢を崩さない。最終予選第2戦バーレーン戦を翌日に控えた9日の練習後、菅原は次のように現状への受け止めを口にした。 「いま出ている純也くんと律くんとの差別化をしっかり自分自身がすることが僕がそこで試合に出ることにつながるのかなと思う。彼らが持っているスペシャリティはものすごいものだと思うし、僕との違いは感じている」 「だからといって『どうしたらいいんだろう』というネガティブなものはない。自分がいま持っているもの、自分が違ったいいもの、自分がこの位置に立った時に出せるものを出していかないといけないし、それがポジション奪取につながる。自分にできることをしっかりやれば大丈夫だと思う」 伊東や堂安とはタイプこそ異なるものの、菅原も攻撃センスを持ち味としてきた選手だ。今夏は5年間を過ごしたオランダのAZからプレミアリーグ昇格組のサウサンプトンに移籍し、世界最高峰のリーグへの挑戦をスタート。さっそく開幕節から出場機会を掴むと、前節ブレントフォード戦ではペナルティエリア内への侵入からの鮮やかなボレーシュートで移籍後初ゴールも決めている。 しかしながら菅原はその実績を盾に不満を持つこともなく、冷静に現実を見つめようとしていた。 「(サウサンプトンで)点を決めたシーンで言えば、後半途中から4バックに変わったので、ボックス内に侵入できる回数が多かった。ウイングバックだとどちらかというとサイドに張って、そこで相手を引きつけたり、基本的に待つことが多いけど、SBではチームからボールに関わりながらアクティブに出して動いてを繰り返してペナの中に入っていくことを求められている」 そうチームやシステムの違いを真摯に受け止めつつ、「そこは僕自身、強みだと思っている」と自信も口に。「ペナルティエリア付近の攻撃的なアイデア、右足の精度はプレミアでも通用すると感じている。そこはウイングバックでもSBでも共通して出せると思うので、頭の中で切り替えてやっていければ」と、いまはそのイメージを発揮すべき時をうかがっているようだ。 出場機会を待つからには中国戦で堂安、伊東が見せたパフォーマンスも客観的に見つめ、自身のパフォーマンスに活かそうとしている。 中国戦の前半には堂安がペナルティエリア内に侵入し、MF久保建英からのクロス攻撃のフィニッシャーになるシーンもあったが、「あの状況は建英もいたから、律くんが中に入ってもタケが外に張ることができたし、出ている選手のバランスがすごく良かった」と要因を分析した菅原。ただ同じようなプレーを狙うのではなく、周囲との連係も含めて吸収していく構えだ。 「後半になって純也くんが入ってもそれと同様にできていた。純也くんが中に入るよりも、純也くんの強みを活かしてサイドに張って、そこでできたスペースを建英と碧くんが使っていた。非常にバランスよくサッカーができていたと思うし、自分が入ったらこうできるなと想像しながら見ていた。中国戦の3バックのやり方は見ていて刺激になった」 苦しい状況であっても、置かれた立場に目を背けるつもりはない。 「ベンチに座っている選手がそういう目を持って試合を見ないことほど無駄なことはない。こういう最終予選で誰がどこでいつ試合に出るかわからないというのは、出ていない選手全員が理解しているし、ベンチに座っているだけで満足している選手もいない。僕たちは日本代表にただ来たわけではなく、試合に勝ちに来たわけで、W杯出場権を取りに来たわけで、試合に出るために日頃やっているわけで、その悔しさは誰もが持っている。そこに対するモチベーションもあるし、いまは試合に出た時のために全員が準備できている」 その第一歩がバーレーン戦。もしもチャンスが来れば、燃える思いをぶつけるつもりだ。