五郎丸歩「選手としての海外挑戦は失敗」―その経験を糧にスタッフとして新プロリーグに挑戦する現在
ラグビーワールドカップ2015で一躍脚光を浴びた元日本代表の五郎丸歩さん(35)は、2021年に現役を引退した。 その5年前にはフランス「TOP14」の強豪クラブ「RCトゥーロン」へ移籍。大きな期待が寄せられるなか、シーズン40試合のうちわずか5試合しか出場できないという辛酸を味わった。だが、その苦い経験が自身の成長の糧となり、現在は静岡ブルーレヴズのスタッフとして、来年1月の新リーグ開幕に向け準備を進めているという。五郎丸さんに今の気持ちを聞いた。(ジャーナリスト・中村竜太郎/Yahoo!ニュース Voice)
選手として海外に出て、成功か失敗かと言われると、失敗
――そもそも海外に出られたきっかけは? 2015年のワールドカップが終わったときに、自分の次の目標というのがまったくなくなってしまい、燃え尽き症候群みたいになってしまった。ちょうどそのとき海外からオファーがあったのですが、海外はレベルが高く想像以上の厳しい世界。自分の個人の能力としてはかなり厳しいだろうと予想しました。けれど挑戦してみようと決心したんです。2016年シーズンにオーストラリアのレッズに半年間。フランスではRCトゥーロンに1年間所属しましたが、日本人として初めての選手でした。 ――特にトゥーロンは世界中からトップ選手が集う強豪チームです。海外での挑戦はいかがでしたか。 選手として海外に出て、成功か失敗かと言われると、これはもうバツですね。失敗だと思います。 海外での話なのであまりご存知ないかもしれませんが、フランスでは40試合のうちわずか5試合しか出場できていないんです。日本では必ず15番(フルバック)をつけて出させてもらっていましたけど、出場機会を得られない期間は実は初めて。 私のラグビー人生は恵まれすぎていたというか、大学1年生でレギュラーに抜擢されて以来ずっとフィールドで活躍させてもらっていましたし、当然、選ばれた以上は誰よりも頑張らなければという姿勢でやってきました。しかしトゥーロンではまわりがすごすぎて、ほとんどレギュラーに呼ばれない。40試合のうち35試合は、ベンチにすら入れませんでした。出場できない選手の気持ちってこうなのかと肌身で感じましたね。 そういう状況の中、結果を残したい、成功しなくちゃいけない。大きな期待と大きなプレッシャーがかかります。私は海外のチームでも、日本にいたときと同様、ベストを尽くしましたが、自分が思い描いたような形にはならない。自分の力の無さに歯がゆさ、もどかしさを感じましたし、普段の私ならばありえないような、考え込んでしまう場面もたくさんありました。